シナリオライター

一般的にシナリオライターは、映画、テレビドラマ、演劇などの脚本・台本を書く人のことですが、現代ではテレビゲームや遊園地やイベントのアトラクションでもシナリオライターが活躍しています。

これらに共通するのは、視聴者や体験者に、創作者の意図に沿った感情を生じさせることです。従って、この仕事には社会情勢、人間の性（さが）、集団心理、文化的な背景などによる認識の違いなどの知識を用いて、効果的なエピソードやモチーフを配置、強調や変化といった演出を加え、ナラティブを構築することが求められます。

原作があるシナリオ・著作者の人格に敬意を払う人間性と技術

「書き下ろし」と呼ばれるシナリオは、シナリオライター自身がプロットを発案、作成するものですが、多くのドラマシナリオは、原作、原案となる「異なる媒体のための物語」から生み出されます。

例えば漫画として創作された物語を、アニメに置き換えるには、アニメのためのシナリオが必要になり、漫画のコマの間に描かれていない部分も書き加えなくてならず、そこには必ず新たな創作が加わります。

文学を映画化する場合には、文字を映像化するという、さらに著しい創作が必要になります。

異なる媒体に創作物を乗せるには、異なるドラマツルギーが必要であることを深く理解しなくてはなりません。まったく同じものが出来上がるということはあり得ません。

そのため、シナリオライターと原作者の間では、意図や意思の確認、調整が必要になります。

シナリオライターという職は、単に物語を紡ぎ出す才能にとどまらず、原作者の人格に敬意を払う人間性、さらにそれを実現可能なシナリオにする、調整能力や豊富な知見と技術が求められます。

課題

収入と地位の格差

ごく一部の売れっ子脚本家は高収入を得ていますが、多くのシナリオライター、特に新人や駆け出しのうちは、生活を維持するのが難しいほどの低い報酬しか得られないことがあります。本業だけで生計を立てられず、副業をしている人も少なくありません。この収入と地位の二極化は深刻です。

不安定な働き方

特にフリーランスのシナリオライターは、常に仕事があるとは限らず、収入が不安定になりがちです。プロジェクトの途中中止や、突然の解雇のリスクもあります。

労働環境の課題

納期がタイトでスケジュールが不規則、修正依頼が多く自分の意見が通りにくい、といった労働環境の厳しさが指摘されることがあります。特にゲーム業界では、リリース直前の「クランチ」と呼ばれる長時間労働が問題となることもあります。

企画・プロデュース側の力関係

日本のエンターテイメント業界では、プロデューサーや監督など、企画・プロデュース側の意見が強く、脚本家が自らの意図通りに作品を作ることが難しい場合も少なくありません。海外、特にハリウッドでは脚本家の地位が非常に高く、作品の中心に位置づけられることが多いのと比べると、日本はまだ改善の余地があるという意見もあります。

AI技術の台頭

生成AIの進化は、シナリオライターの仕事に大きな影響を与える可能性を指摘されています。AIが物語の原案やプロットを生成できるようになれば、脚本家の仕事内容や報酬、さらには存在意義そのものに変化が求められるかもしれません。これに対し、アメリカでは脚本家組合がAIの使用制限に関する合意を勝ち取るなど、業界全体で対応が模索されています。