動画・映像制作用語辞典 | 名古屋映像制作研究室
単焦点レンズ
「単焦点レンズ」とは、レンズが一つの焦点距離しか持たないことを表しています。ズームレンズのように焦点距離を自由に変えることができず、固定された一つの焦点距離でしか撮影できません。
「焦点距離が一定」という言葉から、カメラと被写体との距離が一定である必要があると勘違いしそうですが、距離が一定なのは、レンズとカメラ内部のセンサーまでの距離です。ズームレンズとは違いレンズが動かないため、画角も一定となりますから、必要な構図のためには被写体との距離を調整する必要があり、カメラを移動することになります。あるいは、焦点距離(画角)が異なる、他の単焦点レンズに交換します。
単焦点レンズの種類は、35mm、50mm、85mmなど、焦点距離によって言い表されるため、カメラマンはmmを距離としてではなく、画角の角度としてイメージしています。
余談ですが、白内障の人が手術をして水晶体を人工のレンズに替える時に入れるレンズには、多焦点レンズ、二焦点レンズ、単焦点レンズという種類があります。人間の目にはズーム機能がありますが、これらはすべて焦点距離が一定のレンズです。私は多焦点レンズを入れています。
焦点距離の長さによって映る範囲(画角)が変わる
焦点距離が短いレンズ
広角レンズと呼ばれ、広い範囲を写すことができます。
焦点距離が長いレンズ
望遠レンズと呼ばれ、狭い範囲を大きく写すことができます。
単焦点レンズの構造と開放F値の関係
レンズ構成のシンプルさ
ズームレンズのように複数のレンズを組み合わせて焦点距離を変化させる必要がないため、レンズの枚数が少なく済みます。レンズの枚数が少ないほど、光を通す妨げとなるものが少なく、より多くの光を取り込むことができます。結果、光学的な歪みや収差が少なく、よりクリアでシャープな画像が得られます。
設計の自由度
焦点距離が固定されているため、レンズの設計に自由度があります。より多くの光を集めるように最適化された設計にすることで、開放F値を大きくすることができます。F1.4やF1.8など、開放F値が明るいレンズが多く、背景をぼかして被写体を際立たせる美しいボケ味が得られます。
単焦点レンズが高価なわけ
単焦点レンズは、特定の焦点距離に特化することで、色収差や歪曲収差を極限まで抑えた光学設計が可能になりますが、この設計を実現するには、蛍石レンズや非球面レンズといった高価な特殊ガラス素材が不可欠です。また、レンズの研磨やコーティング、そして組み合わせる際の高い製造精度が求められ、熟練した技術と高価な設備が必要となります。
特にF値が小さい(明るい)単焦点レンズは、光を多く取り込むためにレンズの口径が大きくなり、素材費や製造費が増します。さらに、光の反射を抑える多層膜コーティングや、プロ仕様の防塵防滴構造、堅牢な鏡筒などもコストを押し上げます。開発に投じられる莫大な研究開発費や、ズームレンズに比べて少ない生産量も、単焦点レンズが高額になる理由です。これらの複合的な要因が、その価格に反映されています。

【関連用語】
1. ズームレンズ
焦点距離を連続的に変化させ、撮影範囲を拡大・縮小できるレンズのこと。一つのレンズで様々な画角に対応できるのが特徴。望遠レンズと広角レンズの両方の機能を兼ね備えているため、様々なシーンで活躍します。
2. 被写界深度
写真の中でピントが合っているように見える範囲のこと。絞り値やレンズの焦点距離、撮影距離によって変化します。浅い被写界深度では背景がぼけやすく、深い被写界深度では手前から奥までピントが合います。
3. 画角
レンズを通して見える範囲の広さを表す角度。広角レンズは広い範囲を、望遠レンズは狭い範囲を捉えます。画角によって写真の印象は大きく変わります。
4. 構図
写真全体のバランスや見た目の印象を決める要素。被写体の配置、線の流れ、余白の取り方など、様々な要素が組み合わさって構図が形成されます。
5. フレーム
写真の中に現れるすべての要素を囲む境界線のこと。写真全体の印象を大きく左右する要素で、被写体を際立たせたり、奥行き感を出すなど、様々な効果を生み出すことができます。