CONSENSUS / DECISION MAKING
企業組織の合意形成と映像制作
BtoB映像制作では、映像をどう作るかだけでなく、誰が、どの段階で、何を判断するのかという意思決定の仕組みも重要です。
このページで考えること
企業という組織が映像を発注すると、意思決定はどう変わるのか。 承認、社内確認、修正と変更、最終決定者の考え方を把握します。
担当者、技術部門、広報、上司、経営層。企業では一つの映像に複数の立場が関わります。合意形成は「全員の意見を入れること」ではなく、必要な人が必要な段階で必要なことを判断することです。
企業の映像制作では、発注担当者と制作会社が合意すれば、そのまま制作を進められるとは限りません。
製品については技術部門の確認が必要になる。表現について広報部門から意見が出る。予算は上司が決裁する。最終的には経営者の承認が必要になる。
一つの映像に、立場も責任も異なる複数の人が関わることがあります。
企業が組織として映像を作る以上、映像をどう設計するかだけでなく、誰が、どの段階で、何を判断するのかという意思決定の仕組みも考える必要があります。
窓口担当者が最終決定者とは限らない
制作会社が日常的にやり取りするのは、通常、企業の担当者です。
しかし、その人がすべてを決められるとは限りません。
担当者は制作会社との連絡や社内調整を行う。技術部門は製品や技術について事実関係を確認する。広報部門は企業としての表現やブランドとの整合性を見る。上司や経営層は制作の目的や予算について判断する。
制作会社から見れば「一社のクライアント」でも、その内部には複数の判断主体があります。
立場によって、見ているものが違う
同じ映像を見ても、立場によって気になるところは違います。
経営者は、企業として何を発信する映像なのかを見るでしょう。営業担当者は、顧客への説明に役立つかを考えます。技術者は、技術的な表現が正確かを確認します。広報担当者は、企業ブランドや他の発信内容との整合性を気にするかもしれません。
制作会社は、視聴者にどう伝わるかという視点から判断します。
どれも必要な視点です。重要なのは、その人が何を判断する立場なのかを理解し、尊重することです。
全員がすべてを決める必要はない
関係者が多いからといって、全員がすべての制作工程に参加する必要はありません。
むしろ、関係者全員へ毎回確認すると、意思決定が難しくなる場合があります。
映像のテンポが速い。音楽が好きではない。このカットの方が格好いい。自分の部署についてもっと説明してほしい。
一つひとつには理由があっても、すべての意見を加えていけば、一つの映像としての目的や構成を失うことがあります。
必要なのは、必要な人が、必要な段階で、必要なことを判断することです。
制作段階によって、決めることが違う
映像制作では、すべてを一度に決めるわけではありません。
企画段階では、なぜ作るのか、誰に伝えるのか、何を伝えるのか、どのような方向性にするのかを決めます。
シナリオ段階では、情報に不足はないか、事実関係は正しいか、構成に問題はないか、この内容で制作へ進んでよいかを確認します。
撮影やCG制作が進んだ後は、合意した設計が適切に映像化されているかを確認します。完成前には、テロップ、ナレーション、音声、表記なども確認します。
確認回数を増やすだけでは、合意形成にはなりません。「今、何を決定する段階なのか」を共有することが必要です。
方向性を決める人には、早い段階で見てもらう
制作途中は担当者だけで確認し、完成間近になって初めて上司や経営者へ見せる。
この進め方には大きなリスクがあります。
完成間近になって「そもそもこの方向ではない」「この内容を中心にするべきではない」「想定していた視聴者が違う」という意見が出れば、編集だけでは対応できません。
方向性を決める人には、方向性を変更できる段階で確認してもらうことが重要です。
シナリオは合意形成の道具でもある
映像は、完成するまで全体を見ることができません。
そのため、「完成してから見て判断します」では遅いことがあります。
そこで、まだ存在しない映像をシナリオとして言語化します。
誰に何を伝えるのか。どんな順序なのか。何を見せるのか。何を説明するのか。
シナリオは映像を設計するだけでなく、企業と制作会社が「これを作る」と合意するための道具でもあります。
合意したことを残す意味
企業案件では、制作期間中に関係者が変わることもあります。
担当者が異動する。途中から別の部署が加わる。上司が交代する。
そのとき、制作の経緯が口頭だけで共有されていると、「なぜこの構成になったのか」「誰がこの内容を決めたのか」が分からなくなることがあります。
企画やシナリオとして合意内容を残すのは、制作途中でも当初の目的と判断へ戻れるようにするためです。
「修正」と「変更」は区別した方がよい
映像制作では、完成までに修正が発生します。
テロップの誤字を直す、音量を調整する、カットのタイミングを整える。こうしたものは、合意した制作内容の中で完成度を上げる修正です。
一方で、伝える内容そのものを変える、構成を変更する、新しい撮影を追加する、別のCGを作る、となれば、すでに合意した設計や仕様そのものが変わります。
重要なのは、変更を禁止することではなく、何が修正で、何が合意済みの内容を変える変更なのかを双方が認識することです。
意見を集めることと、意思決定は違う
企業内で多くの人に映像を見てもらうこと自体は問題ではありません。
さまざまな立場から意見を集めることで、見落としに気づくことがあります。
しかし、「10人に見せて10人の意見を全部反映する」ことが合意形成ではありません。
意見収集と意思決定は別の工程です。どの意見を採用するのか、なぜ採用するのか、誰が最終的に判断するのかを決める必要があります。
制作会社は判断材料を提供する
企業内の意思決定は、発注企業が行うものです。
しかし、制作会社にも役割があります。
二つの構成案があるなら、それぞれ何が違うのか説明する。尺を短くするなら、どの情報を削ることになるのか示す。新しい要望を加えるなら、構成や制作費へどう影響するのか説明する。
映像制作上の判断は制作会社が行い、その理由を説明する。企業として判断すべきことは企業側に判断してもらう。この役割分担も、合意形成の一部です。
合意形成は「全員が好きな映像」を作ることではない
映像には、好みが入りやすいものです。
音楽が好きか。テンポが好きか。映像が格好いいか。出演者の印象がよいか。
こうした感覚を完全になくすことはできません。
意見が分かれたときに戻るべきなのは「誰が好きか」ではなく、「この映像の目的に対して、どちらが適切か」です。
BtoB映像制作は、組織の意思を一つの映像へまとめる仕事でもある
企業には、さまざまな立場の人がいます。
それぞれが違う知識を持ち、違う責任を負っています。
その知識や意見を必要な段階で集め、判断し、一つの映像へまとめる。
BtoB映像制作は、企業という組織が持つ情報や意思を、一つのコミュニケーションとして成立させる仕事でもあります。
企業と制作会社が「何を作るのか」について合意すれば、それは制作内容の仕様になります。目的、予算、納期などの条件と、この仕様をどう結びつけて発注するのか。それが次の問題です。