FACTS / EXPERT INFORMATION
BtoB映像で専門情報をどう伝えるか
分かりやすくすることと、情報を単純にすることは同じではありません。
このページで考えること
専門情報を「簡単に言い換える」のではなく、何を伝えるべきかを見極め、事実を理解可能な形へ変換するBtoB映像の情 報設計を考えます。
BtoB映像では、製品の性能、技術の原理、研究成果、製造工程、事業の仕組みなど、専門的な情報を扱うことがあります。必要な事実を削るのではなく、対象者が理解できる形へ整理することが重要です。
企業の映像制作では、専門的な情報を扱うことがあります。
製品の性能、技術の原理、研究成果、製造工程、事業の仕組み、業務手順。
こうした情報を映像にするとき、「できるだけ分かりやすく」という考え方はもちろん重要です。
しかし、分かりやすくすることと、情報を単純にすることは同じではありません。
特にBtoB映像では、視聴者が判断するために必要な情報を削ってしまえば、映像として見やすくなっても、本来の目的を果たせなくなることがあります。
「難しいから削る」でよいのか
たとえば、あるメーカーの新技術を紹介するとします。
一般の人には理解しにくい技術なので、「細かい話は省いて、従来より優れた技術だと伝えましょう」とすれば、映像は簡単になります。
しかし、その映像を見る人が導入を検討している技術者ならどうでしょう。
なぜ優れているのか。従来方式と何が違うのか。どのような条件で効果が得られるのか。自社の設備に適用できるのか。
専門的な内容であることは、削る理由にはなりません。判断すべきなのは、その情報が対象者にとって必要かどうかです。
分かりやすさは、視聴者によって変わる
映像に限らず、「分かりやすい」という評価には相手が必要です。
小学生に分かりやすい説明と、技術者に分かりやすい説明は同じではありません。
専門家に対して、一般向けに言葉を置き換えすぎれば、かえって意味が曖昧になることがあります。
反対に、専門家同士では当然の前提を、初めてその製品を知る購買担当者へそのまま話しても理解できないでしょう。
誰に伝えるのか。その人は何を知っているのか。何を判断するために見るのか。そこから、必要な情報を対象者が理解できる形にします。
まず、何が事実なのかを理解する
分かりやすく表現する前に、制作する側が理解しなければならないことがあります。
何が事実なのか。何がその企業の主張なのか。何が客観的に確認できる特徴なのか。何が競合との違いなのか。なぜその違いが生まれるのか。
映像表現を考えるのは、その後です。
企業から提供されたWebサイト、カタログ、技術資料、営業資料、社内資料を短くまとめれば映像になるわけではありません。
どの情報が今回の目的に必要なのかを判断するには、その内容を理解する必要があります。
映像制作者は、その企業について勉強する
BtoB映像制作では、企画を始める前にクライアントについて調べます。
どんな会社なのか。何を作っているのか。誰が顧客なのか。その製品や技術は何のために存在するのか。競合と何が違うのか。なぜ顧客から選ばれているのか。
もちろん、映像制作者がクライアントと同じ専門家になることはできません。
しかし、何を伝えるべきか判断できるところまでは理解する。それが企画を行うために必要です。
企業自身には「当たり前」になっている情報がある
企業の中にいる人にとって、日常的に行っていることは「当たり前」になっています。
毎日行っている品質確認、製造工程の工夫、顧客対応、技術者なら当然だと思っている判断、長年積み上げてきたノウハウ。
外部の人から見れば重要な特徴でも、当事者自身は特別なことだと思っていない場合があります。
制作会社は、渡された情報を受け取るだけでなく、企業の中にある、まだ言葉になっていない情報を探す必要があります。
外部の人間だから気づけることがある
制作会社は、その企業の専門家ではありません。
これは弱点であると同時に、利点でもあります。
企業の人にとって当然のことを「なぜそうするのですか」と聞くことができます。技術者が何気なく話したことに「それは他社でも普通なのですか」と問い返すことができます。
企業内部の専門知識と、外部から見る制作会社の視点。この二つを組み合わせることで、伝える価値のある情報が見つかることがあります。
インタビューは情報を発見する方法でもある
インタビューも、完成映像に登場する人のコメントを撮影するだけの工程ではありません。
経営者、技術者、社員などに話を聞くと、資料には書かれていない情報が出てくることがあります。
なぜその製品を開発したのか。何が難しかったのか。現場では何を大切にしているのか。顧客からどんな相談があるのか。どんな失敗を経験したのか。
インタビューもまた、企業が持っている情報を発見するための取材です。
当事者の言葉が、そのまま客観的事実とは限らない
企業から聞いた話を、そのまま映像にすればよいわけでもありません。
人は誰でも、自分自身について完全に客観的ではいられません。
「業界最高」「圧倒的な技術力」「他社にはできない」といった表現をするなら、それをどのような事実が支えているのかを考える必要があります。
企業の主張と、確認できる事実。評価と、事実。この区別を意識することは、企業が自らについて語るBtoB映像では特に重要です。
事実を並べるだけでも伝わらない
では、事実だけを大量に並べれば正確な映像になるのでしょうか。
そうではありません。
何が重要なのか。どの順序なら理解できるのか。何と何を比較すれば特徴が分かるのか。どこを映像で見せればよいのか。どこに図解が必要なのか。何を言葉で補うのか。
BtoB映像制作では、事実を集めることと、それを伝わる情報へ変換することの両方が必要です。
表現は事実の後にある
映像には、情報を強く印象づける力があります。
撮影、照明、編集、音楽、ナレーション、CG、アニメーション。これらによって、同じ情報でも受ける印象は大きく変わります。
だからこそ、順序が重要です。
何を伝えるべきかを理解し、その情報を伝えるために適切な表現を選ぶ。事実 → 情報 → 表現、という順序です。
「正確な映像」とは何か
映像における正確さというと、数字、名称、字幕などを間違えないことを想像するかもしれません。
もちろん、それらは正確でなければなりません。
しかしBtoB映像では、それだけでは不十分です。
一つひとつの情報が正しくても、重要な条件を省略したために視聴者が誤解することがあります。情報の順序によって、実際とは違う因果関係に見えることもあります。
正確さとは、情報をそのまま並べることではありません。必要な事実を選び、関係を整理し、対象者が正しく理解できる形へ設計することです。
BtoB映像の「分かりやすさ」
BtoB映像における分かりやすさは、難しいものを簡単なものへ置き換えることではありません。
専門的な情報なら、その専門性を保ったまま理解できる方法を考える。複雑な仕組みなら構造を整理する。目に見えない現象ならCGや図解で可視化する。必要な情報が多ければ理解できる順序に並べる。
情報そのものを減らすのではなく、理解するための負担を減らす。
そして、企業から集めた事実や専門情報を、誰に何をどの順序で伝えるのかという設計へ変える工程が、企画とシナリオです。