第三章:カットの種類と効果
- 神野富三

- 10 分前
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ショットの設計とカット割り
カット割りを考えるうえでは、「何を、どの大きさで、どの方向から、どのような動きで撮るのか」というショットの設計が重要になります。
「ショット」と「カット」は、同じものではありません。
カメラが回り始めてから止まるまでの連続した撮影、あるいはそのように撮影された映像単位を指します。一方、カット(cut)は、ショットを編集によって区切り、作品の中に配置した映像の単位として使われる言葉です。
ただし、日本の映像制作現場では「このカットはもう少し寄ろう」「次のカットはロングで」といったように、撮影の段階から一つの画面、一つの撮影単位を「カット」と呼ぶことも一般的です。そのため「カットサイズ」「ショットサイズ」という言葉も、多くの人が必ずしも厳密に区別していません。

ここでは、撮影する画面そのものの設計については主に「ショット」という言葉を使い、それらを編集によって組み合わせることを「カット割り」として説明します。
ショットサイズによる画面の違い
ショットサイズとは、被写体を画面の中にどの程度の大きさで収めるかを示すものです。

ロングショット(LS)
人物だけでなく周囲の環境まで広く捉えます。人物が「どこにいるのか」「周囲に何があるのか」といった状況を伝えやすく、シーンの導入などにも用いられます。
ニーショット(KS)
人物の膝付近から上を収めます。上半身だけでは分かりにくい身体の動きを見せながら、人物を比較的大きく扱うことができます。
ウェストショット(WS)・ミディアムショット(MS)
人物の腰から上を大きく捉えながら、周囲の状況もある程度残すサイズです。会話、動作、人物同士の関係など、人物と状況の双方を見せたい場合に広く使われます。
バストショット(BS)
人物の胸付近から上を捉えるサイズです。表情を十分に見せながら、身振りや姿勢もある程度伝えられるため、インタビューや会話場面などでも多用されます。
クローズアップ(CU)
顔や手、物など、見せたい対象を画面いっぱいに近い大きさで捉えます。表情の変化や細部を明確に見せ、観客の注意を特定の対象へ集中させる働きがあります。
ショットサイズの名称や境界には、現場や制作分野による違いがあります。本質的には、画面の中で何を見せ、何を見せないのかという選択です。
同じ人物でも、ロングショットからクローズアップへ切り替えれば、観客の注意は周囲の状況から人物の表情へ移ります。ショットサイズの組み合わせは、カット割りによって観客の注意を導く基本的な手段となります。
カメラアングルによる見え方の違い
カメラを被写体に対してどの高さ、どの方向に置くかによっても、画面の印象は変わります。

ハイアングル
被写体を高い位置から見下ろすアングルです。人物と周囲の位置関係を見せたり、地面方向への広がりを画面に取り込んだりすることができます。
ローアングル
低い位置から被写体を見上げるアングルです。建物や人物の高さを強調したり、通常とは異なる視覚的な印象を作ったりすることができます。
ハイアングルは人物を「弱く」、ローアングルは「強く」見せると説明されることがありますが、これは代表的な演出的解釈の一つです。画角、レンズ、被写体の動き、照明、前後のカットなどによって意味は変わるため、アングルだけで心理的効果が決まるわけではありません。
また、カメラをほぼ水平に構える一般的なアングルでは、極端な上下方向の強調が少なく、人物や物の形、位置関係を素直に見せることができます。
なお、主観ショット(POV)はカメラの高さを表す「アングル」の一種ではありません。登場人物が見ている光景を、その人物の視点として提示するショットです。ハイアングルやローアングルとは分類の基準が異なります。
同様に、俯瞰も単純にハイアングルの強いものと扱うより、上方から全体を見渡す画面として、その目的や構図を考える必要があります。
カメラワークを伴うショット
ショットは、カメラを固定して撮影するものだけではありません。ひとつのショットの途中でカメラを動かすことで、画面内の情報や構図を連続的に変化させることができます。

パン(pan)
カメラの位置を動かさず、カメラを水平方向に振る動きです。広い範囲を順に見せたり、移動する被写体を追ったり、ある対象から別の対象へ観客の注意を移したりするために使われます。
上下方向にカメラを振る動きは、現代ではチルト(tilt)とも言いますが。従来の日本の撮影現場では「縦パン」「パンアップ」「パンダウン」などと呼ばれてきました。
ドリー
カメラそのものを移動させる撮影です。被写体へ近づく、離れるといった移動だけでなく、撮影方法によってさまざまな方向への移動が可能です。
トラック(トラッキング)
移動する被写体を追ったり、被写体に対して横方向などへカメラを移動させたりする撮影を指します。「ドリー=前後、トラック=左右」と単純に分けられる場合もありますが、実際の用語法は制作分野や地域によって一定ではありません。
ズーム
カメラそのものを移動させるのではなく、ズームレンズの焦点距離を変える操作です。画面上では被写体が大きくなったり小さくなったりしますが、カメラ自体が被写体へ近づくドリーとは、遠近感や背景との位置関係の変化が異なります。
ショットを組み合わせることが「カット割り」
ショットサイズ、カメラアングル、カメラポジション、カメラワークは、それぞれ一つのショットをどのように作るかという選択です。しかし、映像表現は一つのショットだけで完結するとは限りません。
例えば、ロングショットで部屋全体を見せる。人物のミディアムショットへ切り替える。人物が机の上を見る。机上の書類をクローズアップで見せる。再び人物の表情へ戻る。
こうして複数のショットを組み合わせることで、観客に「どこを見るのか」「何が重要なのか」「人物が何を見て、どう反応したのか」を順番に伝えることができます。
カット割りとは、何をどのようなショットとして見せ、それをどの順序でつなぐかを設計することです。
ショットサイズやアングル、カメラワークについての知識は、そのための選択肢です。個々の技法に一対一で決まった心理効果があるわけではなく、前後のカットとの関係を含めて、観客に何をどのように見せるのかを考えることが、カット割りの基本となります。








