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ロケーション撮影における器物破損事故防止のために

更新日:4月27日

私たちの生業である企業映像制作は、クライアントあってのビジネスです。

企画から納品まで一貫して請け負う場合でも、最終的な責任主体はクライアント企業であり、対外的にはクライアント企業が制作していると認識されます。したがって、私たちのあらゆる行動は、クライアント企業の社員と同等の責任と品位が求められ、その結果についても同様の責務を負うべきです。


映像制作の各工程の中でも、特にロケーション撮影は、出演者、スタッフ、撮影対象物、撮影場所、機材、ロジスティクスなど、人や物の動きが頻繁となるため、最も事故発生のリスクが高いと言えます。


重要文化財
これはNG


器物破損はなぜ発生するのか


私たちの撮影場所は、クライアント企業のオフィスや製造工場といった施設が中心であり、その土地、建物、設備、什器、商品などに一切の損傷を与えてはなりません。一時的に撮影のために借用する場合であっても、100%原状回復することが当然の義務です。


あるいは、企業PR映像制作にために、クライアントの手配で歴史的建造物などでの撮影を行った場合、そこで私たちが起こした事故はすべてクライアントが非難を受けることになります。絶対に避けなくてはならない事態です。


クライアントからの指示を待つまでもなく、私たち制作スタッフ、技術スタッフは常に安全を意識しています。しかしながら、残念なことに事故は時折発生してしまいます。

その要因として最も大きいのが、以下の現状です。



撮影スタッフの寄せ集め


映像制作業界においては、社内スタッフのみで撮影に関わる全ての役割を担うことは稀です。制作、演出、撮影、照明、音声、美術、出演者、ケータリング、ロジスティクスなど、各分野の専門家が、その都度、得意分野やスケジュールに合わせてキャスティングされます。多くの場合、各担当にはチーフに加え、アシスタントも配置されます。


このため、スタッフ一人ひとりの経験値はもとより、安全管理に対する意識レベルにも差異が生じます。各々の専門領域においては熟練したプロフェッショナルであっても、安全管理に関する経験値や意識は一様ではありません。

「何をやると危険か」「何をやらないと危険か」を熟知しているスタッフもいれば、経験の浅いアシスタントの中には、ロケ場所やその設備の保全、保安に対する責任感が希薄な者も存在します。


もちろん、クライアントやプロデューサーは通常、ロケ地の交渉段階から安全管理に細心の注意を払っています。そして、スタッフ間のコミュニケーションが円滑な現場では、事故は起こりにくいものです。

しかし、経験の浅いスタッフが、自身の専門外の領域に不用意に手を出すことが、時折事故を引き起こします。例えば、手が空いたからと善意で片付けを手伝おうとして、電源が入ったままの高熱の照明器具に触れてしまうといったケースです。本人にとっては親切心からの行動であっても、照明技師にとっては「勝手に触るな」という領域です。



事故の原因は「人」にある


撮影スタッフが寄せ集めにならざるを得ない状況において最も重要なことは、自身の担当領域における安全管理は、その担当者自身が責任を持ち、チーフはアシスタントの責任をもつという意識を徹底することです。そして、他のチームの作業を手伝う際には、必ずそのチームのチーフの指示を仰ぐべきです。

そして、プロデューサーは、こうした意識を撮影に関わる全てのスタッフに浸透させる責任があります。プロデューサーには撮影スタッフ全員の管理責任があるからです。

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