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映像制作プロデューサーの仕事とは?私にとってのプロデューサー職

様々な業界にプロデューサーがいて、映像制作業界にも様々なタイプのプロデューサーがいます。プロデューサーと聞くと「悪徳」とか「敏腕」とか、ちょっと穏やかでない形容詞が付くことが多いのも、この職の実態がよくわからないからに違いありません。今日はその中でも「私にとってのプロデューサー職」についてお話しします。



■ プロデューサー=「橋渡し役」ではない


VP映像制作業界で「プロデューサー」と聞くと、クライアントと制作スタッフの間を取り持つ“調整役”のように思われがちです。確かに、スケジュールや予算、進行管理といった実務的な部分も職務の一部です。しかし、私にとってのプロデューサーとは、それだけではありません。

むしろ、映像の構想を生み、物語の骨格を設計し、制作チームが進むべき方向を定める人間です。プロデューサーは「裏方」ではなく、「最初の一行を描く表現者」だと考えています。


考えるプロデューサー


■ プロデューサーという職の成り立ちと変化


私が業界に入った頃、プロデューサーは制作現場には関わらない“営業的な責任者”という位置づけでした。私自身も最初の肩書はプロダクションマネージャー(PM)で、撮影の段取りや予算調整を担う、いわば現場の事務方でした。

ところが、10年ほど経験を重ねるうちに、「どう撮るか」よりも「何を創るか」を考えることの重要性に気づきました。試しに自分で企画書を書いて応募したコンペで、3件連続して採用されたことが転機となりました。

それ以来、私は脚本・演出・編集にも関わるようになり、“企画から現場までを一貫して設計するプロデューサー”として活動しています。



■ プロデューサーの仕事を構成する3つのフェーズ


映像制作におけるプロデューサーの仕事は、大きく分けて以下の3段階に整理できます。どの段階にも共通しているのは、「構想力」と「判断力」です。


① 企画・構想フェーズ

最初の仕事は、クライアントが抱える課題を「映像の物語」に翻訳すること。単に「動画を作る」ではなく、「なぜその映像を作るのか」を言語化します。ターゲット、目的、感情の流れを設計し、企画書として形にします。この時点で、作品の世界観や表現トーンの80%が決まります。


② 制作フェーズ

企画に基づき、ディレクターカメラマン、照明、音声、出演者などをキャスティング。撮影現場の運営はもちろん、全員が同じ方向を向くための“意思統一”がプロデューサーの役割です。一つの演出を実現するために、誰を配置し、どんな機材を選ぶか。ここに経験値が問われます。


③ 編集・仕上げフェーズ

撮影後は編集・MAカラーグレーディングなど、ポストプロダクション工程に立ち会います。ここでの判断は「完成度」ではなく「意図の再現度」です。企画段階で掲げた目的を、映像表現としてどこまで正確に落とし込めているかを見極めます。



■ 現場を動かすのは“段取り”ではなく“構想”


私が常に意識しているのは、「現場は段取りではなく構想で動く」ということです。プロデューサーが明確な意図を示せば、ディレクターも撮影チームも安心して力を発揮できる。逆に、意図のない現場は、どれだけ機材が良くても空回りします。

だからこそ、プロデューサーは“最初の設計者”でなければなりません。それは営業でもなく、監督でもなく、プロデュースという独自の知的作業です。



■ 音と映像の間で学んだ「構成のリズム」


少し個人的な話をすれば、私はもともとラジオ局の仕事をしていました。学生時代はバンドでベースを弾き、音の間(ま)や構成のテンポを体感してきましたの経験が、後に映像のリズム設計にも生きています。

音と映像をどう組み合わせれば、人の心を動かすか。その「感情の設計」こそ、プロデューサーの最もクリエイティブな仕事だと考えています。



■ 企業が知っておくべき「プロデューサーの価値」


映像制作を依頼する際、多くの企業担当者は「どのディレクターに頼むか」を重視します。しかし、プロデューサーが誰かによって、作品の完成度は大きく変わります。なぜなら、企画、チーム、演出方針、すべてを束ねて方向を決めるのがプロデューサーだからです。

見積の妥当性や納期管理以上に、「このプロデューサーは何を考えて映像を設計しているか」を見抜くことが、発注側にとって最も重要な判断基準になります。



■ まとめ:プロデューサーは「映像の設計者」である


映像制作におけるプロデューサーは、管理職ではなく、企画・構想・表現のベースを創る設計者です。クライアントの意図を読み解き、スタッフの創造力を最大限に引き出しながら、“目的のある映像”を社会に送り出す――それが、私にとってのプロデューサー職です。


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【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2025年11月現在)

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