頭出し
「頭出し」とは、録音、録画されたコンテンツの中で必要な部分の頭の位置を探し出し、行っている生放送、収録、MA作業などのためにスタンバイすることです。
アナログ時代において「頭出し」とは、磁気テープを読み取る再生ヘッドや、ターンテーブル(レコード)のピックアップ(針)を、スタートしたい音源ポイントよりも少し戻した位置にして止めておくことを言いました。これは、テープレコーダーやターンテーブルがモーターで駆動していて、立ち上がりでは正規の回転数にならないためです。ディレクターのキューや演出上適切なタイミングで、ミキサー(音響技術者)がスタートさせると、演出上効果的なタイミングで音楽や記録音声が始めることができました。
デジタルが主流の現在でも「頭出し」はさまざまな送出コンテンツに対して行われますが、不安定な駆動を伴わないメディアについては、スタートさせたいポイントで止めておけばいいため、旧来の頭出しとは異なるものになっています。
追記)
アナログレコードの頭出しはどうやっていたのか?という質問がありましたので、お答えします。
まず、ターンテーブルにレコードを置き、ターンテーブルの回転をON。モニタースピーカーもONにします。そして、LPレコードの場合は、曲と曲の間は溝の間が広くなっていますから、狙った曲の前の辺りにカートリッジを手で持って適当に針を落とします。曲が合っていることを確認します。間違いなければ、ターンテーブルの回転をOFF。針は乗せたまま、ターンテーブルを手で逆回転させ、針を曲の頭まで戻し(逆回転の音楽が聞こえます)、さらに1/3回転くらい戻したところで止めます。これで頭出し完了です。
あとはディレクターのキューで(実際はキューの一瞬前)スイッチON(回転スタート)、調整卓のフェーダーを上げればOKです。ちなみにこの時代はすでのターンテーブルはダイレクトドライブでした。ベルトドライブの時代は、戻しが多かったはずです。
針を乗せたまま止めたり、逆回転させたり、とずいぶん乱暴ですが、みんなこれでやっていました。
曲の途中、サビの前から再生(放送)したい時には、回転スイッチをONにして、手で回転を止めておいて、タイミングが来たら手を離し、フェーダーを上げる、ということもやっていました。今のDJの原型です。
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【関連情報】
1. プリロール
VTR編集において、編集点を決めた後、テープを少し巻き戻して停止させる機能。
再生開始時の回転数不安定を回避し、スムーズな編集作業を可能にする。
2. キュー
番組制作現場で、演出家やディレクターが出演者やスタッフに対して出す指示のこと。
頭出し素材再生のタイミングや、その他の作業開始の合図として使われる。
3. タイムキーパー(TK)
番組の進行管理を行うスタッフ。
頭出しされたコンテンツを再生するタイミングを指示したり、番組の残り時間を管理したりする。
4. VTRオペレーター
VTR(ビデオテープレコーダー)を操作するスタッフ。
頭出しや再生、録画などの操作を行う。
5. MA(Multi Audio)
番組の音声編集を行う作業。
頭出しされた音源を適切なタイミングで挿入したり、音量調整などを行う。

