ポン寄り
フレーム内に捉えている被写体を、ズームプロセス抜きにアップ(拡大)するカット割(つなぎ)、ないしは撮影時に素早くズームアップすることを指します。素早くズームアップすることは「クイックズーム」とも言います。
撮影時に使われる「ポン寄り」は、まさにこのクイックズームですが、「ポン寄り」は、そのズームアッププロセスを編集時に使用するかどうかを決めずに行われます。
例
ある被写体をフィックスで撮影し終えようとするカメラマンに向かって
ディレクター:「じゃあ、ポン寄りしておいて」
カメラマン:「了解」と言って、ズームリングを素早く回して、引き続きアップショットを撮る
というような使われ方です。
ディレクターは、編集時にこのショットをクイックズームカットとして採用するか、ズーミング過程を削除して繋ぐ(ジャンプカット)かは、脈略を考慮して判断します。ただし、カメラマンは「ポン寄りしといて!」と言われると、クイックズームショットとは考えずに、無造作なズームアップを行う場合がありますので、意思の疎通をしておいた方が無難です。
映像編集におけるカット割としての「ポン寄り」の効果と意図
ジャンプカット (Jump Cut) の一種としてのズームアップ
「ポン寄り」は空間軸を瞬間的に飛ばして被写体に接近するという点で、ジャンプカットの応用形と言えます。ズームインの過程(プロセス)を見せずに、いきなりアップの画になることで、視聴者にハッとさせる、あるいは意図的な違和感を与える効果があります。
強調、注目点の誘導
被写体の特定の表情、小物、ジェスチャーなどに瞬時に視聴者の注意を集中させたい場合に非常に効果的です。ズームの滑らかな動きを見せるよりも、唐突にアップになることで、より強いインパクトを与えます。
リズム感、テンポの創出
特に会話シーンや、状況の変化を素早く見せたい場合に、ポンポンと画が切り替わることで、映像全体のリズムやテンポを加速させることができます。
コメディ効果や感情の増幅
予期せぬズームアップは、コメディアニメのシーンでの驚きや、登場人物の感情の急激な変化を表現する際に使われることがあります。
映像制作会社としての視点
なんちゃって「ポン寄り」の方法
もちろん撮影時にカメラマンがカメラワークとして行いますが、例えば4K撮影、FHD完パケの編集では、編集時にエフェクトの、スケールと位置をキーフレームを使ってアニメーションさせることで、擬似的なクイックズーム(ポン寄り)ができます。
なぜ「ポン寄り」と呼ばれるか?
ジャンプカットと同様に、幾分「無造作」な雰囲気がある行為?
ズームリングをテレ側にストンと回す雰囲気が「ポン」?
この擬音語(オノマトペ)としての直感的な響きが、その操作の性質を言い表しているからかもしれません。
執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。
