ジャンプカット
ジャンプカットとは、同じような構図や場所で撮影された映像を、間の時間を省いて切り繋ぐ編集技法です。もともとは避けるべき編集とされていましたが、現在では表現技法として確立し、様々な映像コンテンツで意図的に使用されています。
通常の映像編集では、時間の経過や場面の切り替えを自然に見せるため、異なるアングルのショットを組み合わせたり、つなぎのショットを入れたりします。一方、ジャンプカットは意図的にその「自然さ」を壊し、時間の経過や状況の変化を唐突に見せる手法です。
例えば、椅子に座って話している人物を撮影した映像で、途中の会話や動作を省いて切り繋ぐと、人物の姿勢や表情が不連続に変化して見えます。この「飛び」や「断絶」の効果により、緊張感や焦燥感を表現したり、時間の経過を印象的に示したりすることができます。
もともとは避けるべき編集とされていましたが、ヌーヴェルヴァーグの映画作家たちが積極的に用いたことで表現技法として確立し、現代では映画やミュージックビデオ、YouTube動画など、様々な映像コンテンツで意図的に使用されています。
1. ジャンプカットの目的
時間の圧縮
長い時間の経過を短く表現する
緊張感の演出
突然の場面転換で、視聴者の注意を引きつける
物語の展開を加速させる
物語のテンポを速くする
不要な部分をカット
冗長な部分を省き、メリハリのある映像にする
2. ジャンプカットの注意点
違和感
繋ぎ目が不自然にならないように、カットする位置を慎重に選ぶ
時間軸の整合性
時間の経過が分かりづらくなる場合があるため、テロップなどで時間軸を明確にする必要がある
視聴者の理解度
ジャンプカットが多すぎると、視聴者がストーリーを追いにくくなる可能性がある
3. ジャンプカットの活用例
サスペンス・ミステリー
犯行現場とアリバイを繋ぎ合わせ、謎解きの過程を加速させる
コメディ
おかしな場面を連続で繋ぎ、笑いを誘発する
アクション
激しいアクションシーンで、時間の流れを速く表現する
4. ジャンプカットの種類
空間的なジャンプカット
場所が異なる2つのシーンを繋ぎ合わせる
時間的なジャンプカット
時間経過を省略して、異なる時間のシーンを繋ぎ合わせる
感情的なジャンプカット
キャラクターの感情が大きく変化する瞬間を繋ぎ合わせる
5. ジャンプカットの効果
テンポアップ
物語のテンポを速め、視聴者を飽きさせない
意外性
視聴者の予想を裏切り、興味を引きつける
表現の幅を広げる
従来の編集手法では表現できないような、斬新な映像表現が可能になる
ジャンプカットは、意図的、効果的に使用すれば、映像表現に幅を与えることができます。しかし、乱用すると「これしかできない素人編集者」というレッテルを貼られます。
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【関連情報】
1. マッチカット(Match Cut)
連続する2つのショット間で、形状、動き、または主題が視覚的に類似している要素を用いて繋ぐ編集技法です。有名な例として、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」で、投げ上げられた骨から宇宙ステーションへと切り替わるシーンが挙げられます。この技法は、時間や場所が大きく異なるシーンを違和感なく繋ぎ、かつ象徴的な意味を持たせることができます。視覚的な連続性を保ちながら、物語の展開や時間の経過を表現する効果的な方法として、芸術的な映像表現に多用されています。
2. クロスカッティング(Cross Cutting)
2つ以上の異なるシーンを交互に編集することで、同時に進行する出来事を表現する技法です。例えば、追う側と追われる側のシーンを交互に見せることで緊張感を高めたり、異なる場所での出来事の因果関係を示したりすることができます。この技法は、物語のテンポを操作し、観客の感情を効果的に操ることができます。特にサスペンス映画やアクション映画で多用され、クライマックスシーンの盛り上げに重要な役割を果たします。
3. スマッシュカット(Smash Cut)
突然かつ意図的に、全く異なるシーンに切り替える編集技法です。通常、劇的な効果や衝撃を与えるために使用され、例えば平和な場面から暴力的な場面へ、または夢から現実へと急激に転換する際に用いられます。この唐突な転換は、観客の予想を裏切り、心理的な衝撃を与えることができます。ホラー映画やサスペンス映画で特に効果的で、観客の緊張感を高める手法として重宝されています。
4. Lカット(L-Cut)
映像と音声の切り替えタイミングをずらす編集技法です。次のシーンの音声が、現在のシーンの映像に重なって始まる(または前のシーンの音声が、次のシーンの映像に残る)形で編集されます。この技法により、シーンの転換をより自然で滑らかにすることができ、会話シーンやドキュメンタリーでよく使用されます。また、物語の展開に流れを持たせ、視聴者の感情を次のシーンへと自然に導く効果もあります。
5. カットオン・アクション(Cut on Action)
アクション繋ぎとも言われ、動作の途中で次のショットに切り替える編集技法です。例えば、ドアを開ける動作を始めたショットから、その動作の途中で別のアングルに切り替えることで、動きの連続性を保ちながら、より効果的な視覚表現を実現できます。この技法は、動作の流れを維持しながらも、最も効果的な角度からシーンを見せることができ、アクションシーンや日常的な動作の描写で多用されています。視覚的な連続性を保ちつつ、観客の注目を維持する効果があります。

