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企業映像プロデューサーが注意すべき用語「ブランディング」

更新日:2025年12月28日

「ブランディング」


企業映像の相談で、ほぼ確実に登場する言葉があります。それが「ブランディング」です。

この言葉は便利である一方、映像制作の現場では最も誤解を生みやすい言葉でもあります。なぜなら「ブランディング」という言葉は、目的・期待・不安・回避したいリスクを、すべて一語に押し込めてしまうからです。

企業映像プロデューサーの視点から、なぜ「ブランディング」という言葉に注意が必要なのかその言葉の背後に、どのような意図が隠れている可能性があるのかを解説します。


ロイヤルワラントのイメージ


「ブランディング」は目的ではなく“状態”を指す言葉


まず押さえておきたいのは、ブランディングという言葉が、映像制作においてどの範囲を指しているのかという点です。

ブランディングは、「ブランドになる」という意味で使われることもあり、その場合、企業がどのように理解され、どのように評価され、どのようなイメージが時間をかけて定着していくか、という 変化のプロセスを指す言葉だと言えます。

この意味では、ブランディングは確かに「動き」を含んだ概念です。


一方で、映像制作の現場では、この言葉が、目的として使われたり、手段として使われたり、表現トーンの指定として使われたり、あるいは判断を保留するための言葉として使われたりと、複数の意味を同時に担ってしまう場面が少なくありません。

その結果、「ブランディング」という言葉が、具体的に映像で何を行うのかを示す言葉のように受け取られてしまうことがあります。


しかし実際には、ブランディングは特定の施策や制作物そのものを指す言葉ではなく、さまざまな取り組みの積み重ねによって、後から振り返ったときに「そうなっていた」と認識される状態に近いものです。

映像は、そのプロセスにおいて理解を助けたり、評価の視点を補ったり、イメージの形成を後押ししたりすることはできますが、それ単体でブランディングを完結させるものではありません。

だからこそ私たちは、「ブランディングする」という表現を、安易に使用するのではなく、少し立ち止まって意味を確認しながら使う必要があると考えています。



「ブランディング」と言われたとき、起きていること


実務の現場では、この一言の中に、次のような意図が重なっていることがあります。


  • 何をしている会社か、正しく伝わっていない

  • 価格や条件以外の評価軸をつくりたい

  • 「ちゃんとした会社」に見られたい

  • 社内外で説明がバラバラになっている

  • 採用で選ばれなくなってきている

  • 経営者の考えが属人化している

  • 事業転換期で、自信や軸が揺らいでいる

  • 広告っぽい表現から距離を取りたい

  • 長く使える、逃げ場のある映像が欲しい


これらはすべて、映像で「何を表現したいか」以前の問題です。しかし「ブランディング」という言葉を使うことで、課題が一見、映像表現の話に置き換えられてしまいます。



映像制作で起きやすいズレ


「ブランディング」という言葉を不用意に受け取ると、次のようなズレが生じます。


  • 抽象的で雰囲気重視の映像になる

  • 何を伝えたいのか、輪郭がぼやける

  • 誰に向けた映像なのかが曖昧になる

  • 評価基準が「好き嫌い」になる

  • 修正理由が感覚論に寄っていく


結果として、「悪くはないが、何の役にも立たない映像」が生まれがちです。

これは制作会社の技量の問題ではなく、最初の言葉の扱い方の問題です。



プロデューサーが見るべきポイント


企業映像プロデューサーとして重要なのは、「ブランディング」という言葉を定義することではありません。

見るべきなのは、次のような点です。


  • その映像は、誰の評価を変えたいのか

  • 何についての誤解を解きたいのか

  • 逆に、何は語らなくてよいのか

  • 社内向けなのか、社外向けなのか

  • 短期の説得か、長期の印象形成か


これらが整理されないまま進む案件ほど、「ブランディング」という言葉が多用されます。



映像でできるブランディング、できないブランディング


重要な点として、映像には得意なブランディングと不得意なブランディングがあります。


映像が有効なケース

  • 語りにくい思想や姿勢を伝えたい

  • 空気感・距離感・信頼感を補いたい

  • 言葉だけでは誤解されやすい事業


映像だけでは成立しないケース

  • 事業内容が定まっていない

  • 社内の合意が形成されていない

  • 誰にどう見られたいか決まっていない


後者の場合、映像は問題を隠す装置になってしまいます。



私たちが「ブランディング案件」で最初に行うこと


私たちは、「ブランディングを考えたい」という相談を受けたとき、いきなり映像表現の話には入りません。

まず行うのは、

  • その言葉が使われた背景の整理

  • 映像に期待している役割の切り分け

  • 映像で扱うべき領域と、扱わない領域の明確化

です。


その上で初めて、「この目的であれば、映像は有効です」あるいは「この課題は、映像の前に別の整理が必要です」とお伝えします。



おわりに


「ブランディング」という言葉は、企業が真剣に悩んでいる証拠でもあります。だからこそ私たちは、その言葉を軽く扱いません。企業映像は、イメージを飾るためのものでも、魔法のように評価を変えるものでもありません。

正しく使えば、企業の理解を助ける強力な装置になる。間違って使えば、課題を覆い隠すだけの映像になる。

私たちは、その分かれ目に立つ役割を担っているのです。


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Tomizo JIinno

執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー

​大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。

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