「動き」だけがカメラワークではない
- 神野富三

- 10 分前
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カメラワークとは、写真や映像を撮影する際に、プロカメラマンが行うべき仕事の総称です。決してカメラを動かす撮影技法だけを指す言葉ではありません
Camara Work = カメラ仕事
カメラワークには、カメラポジションやアングルを決める、構図をつくる、パンやドリーで被写体を追うといった画面上に見える操作だけでなく、レンズの選択、フォーカス、露出、ホワイトバランス、ファインダーやカメラの調整など、意図した映像を正しく記録するための一連の作業を含みます。
英語の Camera Work を日本語に直訳するなら、「カメラ仕事」と考えると、その意味を理解しやすいでしょう。
プロカメラマンのカメラ仕事
さらにプロのカメラマンにとっては、カメラワークはカメラの操作だけでもありません。ディレクターの演出意図を理解し、照明や録音など他のスタッフと連携し、クライアントやスポンサーの意図を撮影に反映することも「カメラ仕事」の一部です。何を、なぜ、どのように撮るのかを共有できなければ、どれほど高度な撮影技術を持っていても、職業としてのカメラワークは成立しません。
カメラワークは「カメラの動かし方」だけではない
これらはカメラワークには違いありませんが、カメラマンの仕事のほんの一部にすぎません。それらは、撮影意図を理解し、カメラポジションやレンズを選び、露出や色、フォーカスなどを整えたうえで、最後に「その画をどう捉えるか」という段階で選択される撮影技術です。
たとえば、三脚にカメラを固定して撮影するフィックスでは、撮影中にカメラを動かしません。それでもカメラマンは、カメラを置く位置を決め、三脚を調整し、レンズを選び、画角を決め、構図をつくり、露出や色を合わせ、フォーカスを取り、被写体の動きを予測して撮影します。
カメラが動いていなくても、そこには多くのカメラワークがあります。

画面には目立って現れないカメラワーク
プロの撮影では、完成した映像を見ただけでは、その作業自体を意識しにくいカメラワークも少なくありません。
ホワイトバランスを取る、露出を適切に設定する、フォーカスを確認する、ファインダーを調整する、レンズやフィルターを選択する。三脚を使用するなら、カメラ重量やレンズに合わせて操作性も調整します。
これらは映像に特殊な効果を加えるための「表現技法」とは限りません。むしろ、カメラを正しく機能させ、撮影者の意図した映像を安定して記録するための仕事です。
適正なホワイトバランスで撮影された映像を見ても、「ホワイトバランスが取られている」と観客が意識することはまずありません。しかし、その仕事を怠れば、結果は画面にはっきり現れます。
優れたカメラワークには、「何かをしたことが目立つ技術」だけでなく、「問題なく撮れているために気づかれない技術」もあります。
「どう撮るか」を決めることもカメラワーク
カメラワークには、機材を正しく扱う技能だけでなく、撮影者の判断も含まれます。
どこにカメラを置くのか。どの高さから撮るのか。どのレンズを使うのか。どこまでをフレームに入れるのか。被写体が動いたときに追うのか、あえて追わないのか。パンするのか、カメラを固定するのか。
こうした判断によって、同じ被写体を撮影しても出来上がる映像は大きく変わります。
そのため、カメラワークはカメラ操作ではありません。撮影意図を理解し、それを具体的な画として成立させるために、カメラマンが判断し、準備し、操作する一連の仕事と考えることができます。
英語の「camera work」
英語の camerawork / camera work も、もともとカメラの「動き」だけを意味する言葉ではありません。
英語辞書には現在でも the work of a camera operator、すなわち「カメラオペレーターの仕事」という意味が示されています。また、1960年代のアメリカのテレビ界には Outstanding Achievement in Electronic Camera Work というエミー賞の部門が存在していました。
この camera work は、パンやティルトといった特定の技法の名称というより、テレビカメラを扱い、放送映像を成立させる専門的な撮影業務を指す言葉として理解する方が自然です。
一方、現在の英語では beautiful camerawork、handheld camerawork、fluid camerawork など、完成した映像から見える「カメラの使われ方」や撮影スタイルを評価する言葉としても広く使われています。
つまり camera work には、カメラを扱う仕事そのものと、その仕事によって画面に現れた撮影表現の双方を見る用法があります。
なぜ「カメラの動かし方」という意味が広がったのか
デジタルカメラの高性能化、自動露出やオートフォーカスの進歩、小型カメラやスマートフォンの普及によって、映像を撮ること自体は誰にでもできるようになりました。
同時に、インターネット上では動画撮影の技法を短時間で教えるコンテンツが大量に作られるようになりました。そこではパン、ズーム、ドリー、ジンバル撮影など、見ただけで違いが分かる技法は説明しやすく、実践もしやすい題材です。
その結果、撮影という仕事の中でも、完成映像から目に見えて分かりやすい操作や表現だけが「カメラワーク」として取り出される傾向が強くなりました。
しかし、撮影の仕事そのものが、その範囲に縮小したわけではありません。
追筆)カメラワークという言葉が、これらの「カメラを動かしながら撮影する方法の総称」として、現代に映像制作業を行う筆者にとっても便利だということを告白しておきます。
カメラマンが行うべき仕事のすべてがカメラワーク
プロカメラマンの仕事は、カメラを格好よく動かすことではありません。
撮影の目的を理解し、必要な画を判断し、そのためにカメラを準備・調整し、適切なポジション、レンズ、露出、色、フォーカス、構図を選択し、必要に応じてカメラを動かし、必要がなければ動かさず、求められる映像を確実に記録することです。
Camera Work――つまり「カメラ仕事」。
そう考えれば、カメラワークとは特定の撮影テクニックの名称ではなく、カメラマンという職能を具体的な仕事として表す言葉であることが見えてきます。



