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採用動画をBtoC広告として考えてはいけない理由

7 分前
読了時間: 11分

採用動画を企画する際、企業担当者が陥りやすい勘違いの一つが、採用活動をBtoCのマーケティングと同じように考えてしまうことです。

「若い人に興味を持ってもらいたい」「まず会社を好きになってもらいたい」「SNSで目立つ動画にしたい」「格好いい会社だと思ってもらいたい」

こうした映像コンテンツは有っていいいものです。しかし、それが採用動画の企画の中心になってしまってはいけません。


商品広告では、商品に興味を持ってもらい、好感を形成し、購入へ導くことが目的になります。しかし採用では、求職者は商品を購入するのではありません。

その会社で働くかどうかを決めます。

勤務時間、仕事内容、人間関係、勤務地、待遇、教育制度、将来のキャリアまで含め、自分の生活のかなり大きな部分を預ける判断です。


しかも企業側も、応募者であれば誰でもよいわけではありません。

採用は、企業が求職者を選び、同時に求職者も企業を選ぶ「相互選択」です。

ここを理解せずに採用動画を企画すると、映像としては華やかでも、採用活動にはあまり役立たないものができてしまいます。


【この記事の主旨】

採用動画は、企業を広告的に演出して応募者を集めるための映像ではありません。本記事では、若者向け演出、再生回数重視、テレビCM依存、情報の詰め込みなど、採用動画で起こりやすい企画上の誤解を列挙し、応募者が仕事内容や職場、働き方を具体的に理解し、自分に合う企業かを判断できる映像設計について解説します。あわせて、採用動画をBtoB企業映像として捉える考え方を示します。


よくある企業ブランディングCMの1シーン
テレビCMによる企業ブランディングは出稿量勝負



  1. BtoC感覚の企画によくあるパターン



「若者向けに格好よく」という企画


よくあるのが「新卒向けなのでテンポ良く」「Z世代向けなので縦型で」「音楽に合わせて社員を格好よく見せたい」という企画です。

若い社員がオフィスを歩き、笑顔でミーティングをし、パソコンを操作し、カメラに向かって微笑む。アップテンポな音楽に合わせて短いコピーが表示される。


映像としては成立します。しかし、見終わった学生が、「この会社で自分は何をするのか」

を説明できないことがあります。

会社の雰囲気は伝わった。何となく楽しそうだった。でも仕事は分からなかった。

採用動画では、これはかなり大きな問題です。

認知用の15秒広告なら成立しますが、それを会社の主要な採用動画にしてしまうと、応募判断に必要な情報が不足します。



「会社の魅力を全部入れよう」という企画


もう一つ多いのが、一本の動画に会社のすべてを詰め込もうとする企画です。

会社の歴史。社長メッセージ。事業内容。製品紹介。社員インタビュー。福利厚生。研修制度。オフィス紹介。将来ビジョン。

これらを5分程度の動画に収めようとします。


その結果、それぞれが数十秒ずつ紹介されるだけになり、どの情報も浅くなります。

採用する側から見れば「全部説明した」ことになります。

しかし求職者から見れば、「どれも少しずつしか分からない」。

現在の採用映像では、一本にまとめるよりも、

会社を知る動画。職種を知る動画。社員を知る動画。1日の仕事を見る動画。制度を知る動画。

と分けた方が合理的です。

求職者も、自分が知りたい情報を選んで見ることができます。



「会社の良いところだけ見せよう」という企画


広告的な発想が強くなると、不都合な情報を映像から排除したくなります。

残業については触れない。仕事の難しさは言わせない。失敗談は使わない。工場の古い部分は映さない。社員には前向きな話だけしてもらう。

企業広告なら、それも一つの方法でしょう。

しかし採用では、入社した瞬間に現実が分かります。

仕事が大変であることを隠して応募者を増やしても、選考辞退や早期離職につながれば採用活動として成功とは言えません。

むしろ、「最初の半年はここが大変でした」「この仕事はこういう人には向かないと思います」「繁忙期にはこういう働き方になります」といった話が、応募者にとって重要な判断材料になることがあります。

採用動画では、企業を美化することよりも、入社後の現実との乖離を小さくすることの方が重要です。



「社員には台本どおり話してもらおう」という企画


社員インタビューでも、広告的な考え方が入り込みます。

人事部が原稿を書く。社員が覚える。撮影現場で何度も言い直してもらう。最もきれいに言えたテイクを使う。こうすると、内容は非常に分かりやすくなります。しかし、その社員本人の言葉には聞こえなくなることがあります。

特に、「風通しの良い職場です」「若手にも挑戦する機会があります」「社員同士の距離が近い会社です」といった採用サイトでよく見る表現を社員全員が話し始めると、視聴者は敏感に「会社が言わせている」と感じます。

社員インタビューでは、言葉を完璧にすることより、本人が経験した具体的な出来事を話してもらった方が伝わります。

「風通しが良い」と言わせるのではなく、「入社3か月目にこういう提案をしたら、上司が採用してくれた」と話してもらう。

抽象的な評価ではなく、事実を話してもらうわけです。



「競合他社より格好よく」という企画


採用動画の相談で意外に多いのが、他社の採用動画を基準にする考え方です。

「A社のようなシネマチックな映像にしたい」「B社より格好よくしたい」「この採用動画のような映像を作れないか」

参考映像を共有すること自体は有効です。しかし、競合企業の映像表現を真似ても、自社の採用課題が解決するとは限りません。同じ製造業でも、

知名度が足りない会社。

応募は多いが技術職が集まらない会社。

工場勤務に誤解を持たれている会社。

内定辞退が多い会社。

それぞれ、必要な映像がまったく違います。

映像表現を決める前に、「現在の採用活動のどこに問題があるのか」を確認する必要があります。



「再生回数を増やしたい」という企画


採用動画でもYouTubeの再生回数が評価指標にされることがあります。

もちろん、多くの人に見てもらうことが目的なら重要です。しかし採用動画の場合、再生回数だけでは成果を評価できません。

例えば、専門技術職を年間10名採用する企業の職種紹介動画なら、何十万回も再生される必要はありません。その職種に本当に興味を持つ500人に見てもらい、その中から適切な応募者が生まれれば十分に意味があります。

限定公開で応募者だけに見せる動画なら、そもそも再生回数を競う必要もありません。

採用動画では、「何人に見られたか」より、「誰が、採用活動のどの段階で、何を理解したか」を見る必要があります。



「テレビCMを流せば応募が増える」という企画


採用活動をBtoC広告と同じように考えると、テレビCMにも期待が集まりやすくなります。

テレビCMは、大量の人に短時間で企業名やメッセージを届けることには向いています。

ただし、15秒や30秒の中で、仕事内容、職場環境、教育制度、キャリア、社員の実像まで理解してもらうことはできません。


採用関連でテレビCMが有効なのは、主に採用ブランディングの領域です。会社名を知ってもらう。採用を積極的に行っている企業だと認識してもらう。企業や業界に対するイメージを変える。企業としての存在感や安心感を高める。こうした目的には有効です。


一方で、「この職種では何をするのか」「入社後はどんな働き方になるのか」「自分に向いている会社なのか」といった応募判断に必要な情報を伝える媒体ではありません。


さらに、テレビCMは数回放送しただけで認知が形成されるものでもありません。採用ブランディングとして機能させるには、一定期間にわたり相応の出稿量を確保し、繰り返し接触してもらう必要があります。

一本のCMを制作し、少数回放送して、「これで学生からの応募が増えるのではないか」と期待するのは、媒体の役割を取り違えています。

テレビCMを利用するのであれば、CMで企業を知ってもらい、採用サイトへ誘導し、そこで会社や仕事を詳しく理解してもらうという役割分担を考えるべきです。


つまり、採用映像では、認知のための映像と理解・判断のための映像を分けて考える必要があります。テレビCMが担えるのは主として前者です。




  1. 採用動画についてよくある質問



採用動画は「広告」ですよね?

採用動画には広告的な面もありますが、企業や仕事を知ってもらう認知段階だけでなく、職種理解、応募判断、選考中の理解促進、内定後の不安軽減など、採用活動の各段階で使われるコミュニケーションツールと考えるべきです。


採用動画と会社案内を兼ねたいのですが?

企業や採用目的によりますが、一本ですべてを伝えようとすると内容が浅くなりがちです。会社紹介、職種紹介、社員インタビュー、1日密着など、目的別に分けた方が求職者には理解しやすくなります。


社員インタビューには台本を用意したいのですが?

話してほしいテーマや質問項目は準備した方がよいですが、文章を丸ごと覚えてもらう方法はおすすめしません。本人の経験や具体的な出来事を自分の言葉で話してもらう方が、信頼感につながります。


採用目的でテレビCMを流したいのですが?

企業認知や採用ブランディングには有効です。ただし、職種や仕事内容を詳しく理解してもらう用途には向きません。また、認知形成には一定期間の出稿量が必要です。テレビCMは採用サイトや詳しい採用動画への入口として考えるのが適切です。


採用動画は社内で制作できますか?

社内制作が向いている動画もあります。日常の職場風景や社員の声などは、社員自身が撮影した方が自然に伝わる場合があります。一方、事業説明やブランド形成、複雑な構成が必要な映像では、プロが企画・撮影・編集を担当した方が適しています。




  1. 採用動画は「人を集める広告」ではない


ここまで見てくると、採用動画の主要な役割は「広告」ではないことが分かります。

認知段階では広告的な映像も必要です。

一方、企業研究では事業や仕事内容を具体的に説明する必要があります。

応募前には職場環境や制度を知りたい。

選考中には、さらに詳しい仕事や社員の情報が必要になる。

内定後には、入社への不安を軽減する情報が必要になる。

つまり採用動画の企画制作とは、ひとつの広告表現を創ることではなく、採用活動の各段階で必要な情報を映像化する仕事です。



採用動画はBtoB映像の領域でもある


採用動画の視聴者は個人です。

その意味では、一見するとBtoCのコミュニケーションに見えます。

しかし映像制作の仕事として考えると、採用動画は極めてBtoB的です。

発注者は企業です。

企画には、人事部門だけでなく、経営層、各事業部、現場責任者、広報部門など複数の関係者が参加します。

伝えるべき内容も、商品の魅力を短時間で訴求するだけではありません。

事業内容。職種。組織。働き方。教育。制度。企業文化。将来性。

複雑な企業情報を理解し、誰に何を伝えるかを決め、それを映像として構成する必要があります。

これは企業案内、技術紹介、事業紹介などのBtoB映像と非常によく似ています。

特に製造業、IT、建設、物流、医療などでは、仕事そのものを理解してもらうために、その企業や業界について制作側がかなり深く理解しなければなりません。

単に若者向けの映像表現に詳しいだけでは作れない領域です



採用活動を理解してから、映像を考える


採用動画を企画するとき、最初に決めるべきなのは、「どんな映像表現にするか」ではありません。

まず、誰を採用したいのか。現在の採用活動で何が問題なのか。応募者は何を知らないのか。どの段階で何を伝える必要があるのか。映像で見せた方がよいものは何か。文章や面談で伝えた方がよいものは何か。を考える必要があります。

その結果として、会社紹介が必要なのか。社員インタビューなのか。1日密着なのか。職種紹介なのか。説明会動画なのか。短いSNS動画なのか。テレビCMによる採用ブランディングなのか。が決まります。

先に手法を決めるのではなく、採用課題から映像の役割を決める。

これが採用動画の企画では重要です。



BtoB企業映像を制作してきたSynAppsだからできること


SynAppsは、企業・法人向けの映像制作を中心に、会社案内、事業紹介、技術説明、採用、研修、IRなど、さまざまな企業映像を制作してきました。

私たちが採用動画を制作するときも、最初から「格好いい採用ムービー」を作ることを目的にはしません。

その企業がどのような事業を行い、どのような人材を必要とし、応募者に何を理解してもらう必要があるのかを確認した上で、映像の役割を考えます。

社員自身が撮影した方が伝わるものもあります。

プロが撮影すべきものもあります。

一本の映像にまとめた方がよい場合もあれば、複数のコンテンツに分けた方がよい場合もあります。

SNSで広く公開すべき映像もあれば、応募者や選考者だけに見せる方が適切な映像もあります。


採用ブランディングとしてテレビCMを使うのであれば、その役割を明確にした上で、採用サイトや職種紹介、社員インタビューなど、その先で応募者の理解を深める映像まで含めて考える必要があります。


企業の採用活動の中で、映像に何を担わせるべきかを考え、それに必要な映像を制作する。

企業映像を長く制作してきたSynAppsが、採用動画でも提供したいのは、そのようなサービスです。


映像制作を発注する企業担当者のための情報発信です。

TomizoJInno.jpeg

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。

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