Part1・AIに書かせてはいけない|生成AIとつくる映像制作仕様書
- 神野富三

- 1 時間前
- 読了時間: 4分
映像制作会社に企画や見積を依頼したい。ところが、いざ「仕様書を作ってください」と言われると困ります。
何を書けばいいのか分からない。どこまで決めればいいのか分からない。そもそも、映像のことが分からない。
これは当然です。発注する企業は、自社の事業については専門家です。しかし、映像制作の専門家ではありません。そこで役に立つのが、生成AIです。
ただし、AIに、「採用動画の仕様書を作って」と頼むのは得策ではありません。
生成AIを仕様書を書く人ではなく、発注者への聞き手として使います。

AIに「書かせる」のではなく「聞いてもらう」
なぜ映像を作ろうと思ったのか。
誰に見せるのか。
現在、何に困っているのか。
何を伝えたいのか。
見た人に、どうなってほしいのか。
どこで使うのか。いつまでに必要なのか。予算はいくらなのか。
こうした質問を生成AIから一つずつ受け、それに答えていきます。
すると、映像制作について詳しくなくても、発注に必要な情報が少しずつ具体的になっていきます。
途中で、
「そういえば、そこを社内で決めていなかった」
と気づくこともあるでしょう。
これも重要です。
生成AIは仕様書を作るだけでなく、発注条件の不足や曖昧さを発見する道具にもなります。
AIに映像を企画させない
ここには、一つ重要な注意点があります。
生成AIに映像の企画まで任せないことです。
たとえば、
「新卒採用のための会社紹介映像を作りたい」
と入力すれば、AIはすぐに、
「3~5分程度」「若手社員へのインタビュー」「職場風景」「ナレーション」……
といった、それらしい企画を考えてくれるでしょう。
しかし、それが本当にその会社にとって最適な方法なのかは分かりません。
そして、それを仕様書に書いて制作会社へ渡してしまえば、制作会社もその条件に沿って見積を作ることになります。
せっかく映像制作の専門家に相談するのに、専門家が考える余地をなくしてしまう。
それでは本末転倒です。
詳しくするのは「どう作るか」ではない
生成AIを使って詳しくするべきなのは、制作方法ではありません。
なぜ作るのか。誰に見せるのか。何が問題なのか。何を伝えなければならないのか。映像によって何を実現したいのか。
こちらです。
たとえば、
若手社員3名にインタビューする。
と仕様書に書くのではなく、
学生に、実際の仕事内容や職場の雰囲気が十分に伝わっていない。
と伝える。
社員へのインタビューが適切なのか、仕事への密着取材がよいのか、別の方法があるのか。
そこから先は、制作会社に考えてもらいます。
相見積が「値段比べ」ではなくなる
この方法は、複数の制作会社から企画と見積を取る場合に、さらに効果を発揮します。
各社に渡すのは、同じ背景、同じ課題、同じ目的、同じ対象者、同じ予算条件です。
しかし、映像の構成、長さ、撮影方法、出演者、ナレーション、CGなどについては、必要以上に指定しません。
すると、制作会社によって提案が変わります。
A社は社員への密着取材を提案する。
B社は製品が社会で使われるまでを軸にする。
C社はグラフィックやCGによる説明を重視する。
ここで比較できるのは、金額だけではありません。
「この制作会社は、私たちの課題をどう理解したのか」
が見えてきます。
つまり相見積を、単なる価格比較から企画力や課題理解力を比較する機会へ変えることができます。
発注企業と制作会社は、それぞれ違う専門家
映像制作の発注には、もともと情報の非対称があります。
発注企業は、自社の専門家です。制作会社は、映像制作の専門家です。
本来、この二つの専門性を持ち寄るところから映像制作は始まります。
ところが仕様書を作る段階で、発注者がよく分からないまま制作方法まで決めてしまうと、この関係が崩れてしまいます。
そこで生成AIを間に置きます。
発注者が持っている情報を質問によって引き出し、制作会社が理解できる形にする。
そのうえで、専門的な判断は制作会社へ渡す。
生成AIは制作会社の代わりではありません。制作会社へ相談するための準備を手伝ってもらうのです。
本当のメリットは「時短」ではない
もちろん、生成AIを使えば仕様書を作る時間は短縮できます。
しかし、それだけなら事務作業の効率化にすぎません。
もっと大きな意味があります。
何を決めるべきなのか。何がまだ決まっていないのか。何を制作会社に伝えるべきなのか。何を制作会社に考えてもらうべきなのか。
これを発注前に明らかにできることです。
生成AIを利用した仕様書作成の価値は、きれいな仕様書を簡単に作れることではありません。
より良い発注をすること。そして、制作会社からより良い提案を引き出すこと。
そのために生成AIを使う。
これが、映像制作の発注における生成AIの、非常に実用的な使い方です。



