企業PR映像制作のスケジュール案作成ガイド
- 神野富三

- 2 時間前
- 読了時間: 5分
企業PRをはじめとする映像制作において、制作会社がクライアントへ提出する「スケジュール案」は、制作プロセスを円滑に進めるための最初の共有物となります。多くの場合、クライアントの社内調整や関連部門のスケジュールは提出時点で確定していません。しかし、制作全体の見通しを示す骨格がなければ、両者が同じ前提をもって企画検討や意思決定を進めることは困難です。そこで制作会社は、あらかじめ定められている納期から逆算し、必要な工程を体系立てて配置した「雛形」としてのスケジュール案を提示することになります。

初期ヒアリングと要件整理
まず、制作会社はクライアントから提示された納期と、現段階で把握できる要件を確認します。企業PR映像の場合、用途(採用、ブランディング、プロダクト紹介など)や尺、公開媒体によって必要な作業内容が変わるため、初期ヒアリングでの情報整理は不可欠です。
【初期ヒアリング項目】
┌─────────────────────────┐
│ ✓ 納期 │
│ ✓ 映像の用途 │
│ ✓ 尺(長さ) │
│ ✓ 公開媒体 │
│ ✓ ターゲット │
│ ✓ 予算規模 │
└─────────────────────────┘
制作会社はこれらの条件を踏まえ、一般的な映像制作に必要な工程——企画・構成、シナリオ作成、絵コンテ制作、ロケハン、撮影、編集、MA(音調整)、クライアントチェック——を基軸として全体像を組み立てていきます。
基本工程とスケジュール構造
スケジュール案の基本的な作り方は、納期から遡りながら各工程の「必要期間」を割り出すことです。
【標準的な映像制作工程】
企画・構成 ────→ 1〜2週間
↓
シナリオ作成 ──→ 3〜5日
↓
絵コンテ制作 ──→ 3〜5日
↓
ロケハン ──────→ 1〜2日
↓
撮影 ──────────→ 1〜3日(調整必要)
↓
編集 ──────────→ 1〜2週間
↓
MA(音調整)──→ 2〜3日
↓
クライアント
最終チェック ──→ 3〜5日
↓
納品 ──────────→ 完成
たとえば、編集には通常1〜2週間、撮影はロケーションや出演者の都合によって1日から数日、企画・構成の確定には社内確認のプロセスを含めて一定の日数を要します。こうした一般的な標準期間をベースにしつつ、クライアントの企業規模や意思決定フローも想定に入れ、無理のない工程配分を行います。
逆算方式のスケジューリング
納期から逆算して各工程を配置する際の考え方を図示します。
【納期からの逆算イメージ】
◀── 納期(確定)
│
◀─────────┤ 最終チェック(3〜5日)
│ │
◀─────────┤ MA(2〜3日)
│ │
◀────────┤ 編集(1〜2週間)
│ │
─┤ 撮影(候補期間で設定)
│
▼
起点(スケジュール案提出日)
撮影日程の柔軟な設定
この段階で重要となるのは、撮影日程にあえて幅を持たせることです。クライアント社内のスケジュール、出演する社員の業務都合、ロケ地の使用可否など、外部要因が多い工程であるため、初回のスケジュール案では特定日に固定せず、候補期間として提示します。
【撮影日程の提示例】
× 固定的提示:「○月○日に撮影」
↓
○ 柔軟な提示:「○月第2週〜第3週の間で調整」
【撮影に影響する外部要因】
・出演者(社員)の業務スケジュール
・ロケ地の使用可否
・天候条件
・関係者の承認プロセス
制作会社はこれを「確定ではなく調整の起点」として捉え、後日にクライアントとともに詳細を詰める前提で設計します。
工程間の依存関係の明示
初回のスケジュール案は、あくまで制作を俯瞰するための骨組みです。クライアント内部の承認フローや関連部署の都合は、この時点では制作会社側では把握しようがありません。そのため、提出するスケジュール案は「概念図」としての役割を重視し、後日の修正を前提とした柔軟性を持たせることが基本姿勢になります。
【工程間の依存関係】
構成が未確定
↓
[待機]
↓
撮影内容が決まらない ──→ 撮影日が確定できない
↓
[待機]
↓
仮編集が完成しない ──→ ナレーション原稿が
最終調整できない
【動かせる工程 vs 動かせない工程】
┌────────────────┬────────────────┐
│ 調整可能 │ 調整困難 │
├────────────────┼────────────────┤
│ ・企画検討期間 │ ・編集作業日数 │
│ ・チェック回数 │ ・MA作業日数 │
│ ・撮影候補日 │ ・納期直前工程 │
└────────────────┴────────────────┘
制作会社は、工程間の依存関係——たとえば「構成が決まらなければ撮影が確定しない」「仮編集がなければナレーション原稿の最終調整ができない」など——を明示し、スケジュール調整の際にどこが動かせて、どこが動かせないのかをクライアントに理解してもらうよう努めます。
スケジュール案の役割
また、初回案では「制作会社がどのような考え方で工程を組んでいるか」を明確に伝えることが望まれます。映像制作は専門性が高いため、クライアント側では工程の必然性がイメージしづらいことがあります。そこで制作会社は、各工程に必要な理由や一般的な時間感覚を簡潔に説明し、進行上のボトルネックになりやすい工程については特に留意点を示します。これにより、クライアントは自社の事情と照らし合わせながら調整しやすくなり、後のスケジュール変更もスムーズに進みます。
【スケジュール案の3つの機能】
1. 共有された仮の地図
└→ 制作全体の見通しを提供
2. 調整の起点
└→ 具体的な日程協議のベース
3. コミュニケーションツール
└→ 制作プロセスへの理解を促進
スケジュールのアップデート
最終的に、提出されたスケジュール案は「共有された仮の地図」として扱われます。実際の制作では、出演者の調整、撮影場所の確保、社内承認の速度など、多くの要素が後から動きます。
【スケジュールの進化過程】
初回案(概念図)
↓
クライアント側との調整
↓
修正版(調整後)
↓
実制作での微調整
↓
確定版(実行スケジュール)
↓
随時アップデート
そのため、制作会社とクライアントは初回案を起点として、実際のプロジェクト進行に合わせて随時アップデートを行い、より精緻なスケジュールへと仕上げていきます。
まとめ
このように、スケジュール案は単なる日付の一覧ではなく、制作プロセスの理解を共有し、両者の協働をスムーズに進めるための「コミュニケーションツール」として機能します。制作会社は、この指針に基づいて柔軟かつ体系的にスケジュール案を作成し、プロジェクト成功に向けた共同作業の土台として活用していきます。
【スケジュール案作成の基本原則】
✓ 納期から逆算して工程を配置
✓ 標準的な作業期間をベースに設計
✓ 外部要因の多い工程は柔軟に設定
✓ 工程間の依存関係を明示
✓ 修正を前提とした柔軟性を保持
✓ クライアントとの共有理解を重視








