映像制作見積書の要点5「編集」
- 神野富三

- 2024年5月25日
- 読了時間: 4分
更新日:3月20日
ポストプロダクションという業態
ポストプロダクション(ポスプロ)は、その名の通り「撮影後」の工程を担う業態です。編集、CG、録音といった作業を、専用の設備と技術者によって提供します。
この業態が大きく発展したのは、映像技術がアナログからデジタルへ移行していく1980年代から2000年前後にかけてでした。
当時は、編集や合成といった作業には高価で特殊な機材が必要であり、制作会社がそれらを自前で持つことは現実的ではありませんでした。そのため、ポスプロは「設備と技術の集積地」として機能していたのです。
「編集費」は設備費だった
当時の制作見積書における「編集費」は、現在とは意味が異なります。
ポスプロの編集室は、オペレーター付きで1時間あたり2〜3万円、設備によっては7〜10万円に達することもありました。結果として、1日編集すれば50万円から100万円規模の費用になることも珍しくありません。
制作会社が提示する編集単価も、こうしたポスプロの料金を前提に設定されていました。つまり「編集費」とは、
機材設備費+オペレーター費
で構成される、いわば“場所を借りるコスト”だったのです。
ポスプロを使わなくなった理由
現在では状況が大きく変わっています。
高性能なパソコンと編集ソフトの普及により、多くの編集作業は自社内で完結できるようになりました。かつては専門施設でしか実現できなかった効果編集も、デスク上で処理できる時代です。
その結果、ポスプロは
高度なCG
特殊な合成
ハイエンドな音響処理
といった、限られた領域に特化しなければ成立しにくい業態へと変化しました。
地方のBtoB映像制作においては、ポスプロを利用する頻度は明らかに減っています。
変わったのは「編集費の中身」
重要なのはここです。
ポスプロを使っていた時代の「編集費」は設備費でした。しかし現在、編集はディレクター自身が自社環境で行うことが一般的です。
このとき問題になるのが、「人件費の重複」です。
ディレクターは
企画
演出
編集
すべてに関わるため、編集費にオペレーターとしての人件費を含めてしまうと、ディレクター費と二重計上になります。
私の「編集費」の考え方
そのため私は、編集費を
機材設備費+技術料
として定義しています。
人件費はディレクター費として計上し、編集費には含めません。結果として、単価はポスプロ前提だった時代の半額以下に設定しています。
ただし一方で、以前のように「見積時間を圧縮する」ことはやめました。現在は、実際にかかる編集時間をそのまま計上しています。
これは、コスト構造が変わった以上、見積もりの考え方も変えるべきだと考えているからです。
ディレクター費との関係
ディレクター費は、
(撮影日数+編集日数+録音日数×0.5)×3.5〜5万円
で算出しています。
例えば、撮影1日・完成尺3分程度のPR映像でも、編集には1日〜長ければ3〜5日程度かかります。そのため、ディレクター費は概ね10万円〜30万円程度になります。
この幅は、内容の難易度によるものです。
ポスプロの時代が終わったわけではない
誤解されがちですが、ポスプロが不要になったわけではありません。
むしろ現在のポスプロは、一般的な制作会社では対応できない高度な領域に特化し、より専門性の高い存在になっています。
ただし、日常的な編集作業の中心は、すでにポスプロから制作会社の内部へと移行しました。
問題は「どこで編集するか」ではない
結局のところ重要なのは、
ポスプロを使うかどうか
自社で編集するかどうか
ではありません。
そのプロジェクトにおいて、
どのレベルのクオリティが必要か
どこにコストをかけるべきか
を正しく判断できているかどうかです。









