天地
「天地」または「天」と「地」は、デザイン、印刷、撮影、舞台技術などの視覚表現分野で用いられる専門用語です。上下の方向性や、上端から下端までの距離を表します。「上部(天)」と「下部(地)」は配置や構図、視覚的バランスを検討する際の基準となります。
1. 天地は大事
一般社会においても「天地」はよく使われる言葉です。
「天地に気をつけて!」と言われた場合、以下の2通りの意味が考えられます。
①上下逆さまになっていないか?
②その高さに収まるか?
これらはどの業界も共通と言えるでしょう。
2. 撮影における天(てん)
映像や写真のフレーム(画面)の上部、または被写体の頭上にある空間を指します。
被写体(人物の頭上など)と画面の上端との間の余白を「ヘッドルーム」と呼ぶこともあり、この空間の取り方によって構図の安定感やメッセージ性が変わります。
「天を切る」という表現は、被写体の上部が画面から見切れる(切れる)ような構図を指し、あえて顔の一部を切ることで、被写体の存在感を強調したり、見る人の想像力を掻き立てたりする効果を狙うこともあります。
人物を撮影する際のショットでは、被写体の頭上からフレーム上辺までの距離の設定は、非常に微妙な調整を要する作業であり「天が詰まっている」とか「天が空きすぎ」という使い方をします。
3. 撮影における地(ち)
構図やフレーミングの検討に際し「地」の扱いは、カメラマンは当然細心の注意を払いますが、あえて「地」という用語を用いてディレクターとコミュニケーションする機会は多くないように思います。
4. 天地の重要性
視覚的バランスの調整
天地における適切な余白や要素の配置は、作品に安定感と調和をもたらし、見る人に心地よい印象を与えます。舞台においても、上下空間の使い方は演出効果に直結します。
情報の整理と誘導
余白を効果的に使うことで、重要な情報に視線を誘導しやすくなり、情報過多による混乱を防ぎます。
印象形成
天地の取り方一つで、開放的でゆったりとした印象、あるいは緊張感のある引き締まった印象など、作品の雰囲気を変えることができます。
執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。
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関連用語など
構図設計やフレーミングに大切なこと
1. 被写体の配置とバランス
画面内での被写体の位置は構図の基本中の基本です。困ったときは三分割法(画面を縦横に3等分した線上や交点に被写体を配置)や対称性を意識することで、視覚的に安定した美しい構図が作ることができます。複数の被写体がある場合は、それぞれの重要度と視覚的重量を考慮してバランスよく配置することが重要です。
2. 奥行きと立体感の表現
平面的な画面に立体感を与えるために、前景・中景・背景の層を意識的に作ることが大切です。被写界深度のコントロール、重なりの活用、線遠近法の利用などにより、画面に奥行きを生み出し、より豊かな視覚表現が可能になります。
3. フレーミングの範囲選択
どこまでを画面に含めるかという判断は、伝えたいメッセージに直結します。全身を入れるワイドショット、上半身のミディアムショット、顔だけのクローズアップなど、ショットサイズによってそれぞれ異なる効果と情報量を持ちます。不要な要素を排除し、必要な要素を適切に含めることで、意図が明確に伝わる構図になります。
4. 視線の誘導と動線
視聴者の目線をどこに向けさせるかを意識した構図作りが重要です。リーディングライン(視線を誘導する線)、色彩やコントラストの配置、光の当て方などを使って、見て欲しい部分に自然に視線が向かうよう設計します。また、動きのある映像では、被写体の進行方向に余白を作ることで、動きの流れを表現できます。
5. 光の方向と質感
光は被写体の立体感、質感、雰囲気を大きく左右します。順光、逆光、サイドライトなど光の方向によって印象が変わり、硬い光と柔らかい光では被写体の見え方が全く異なります。光をコントロールすることで、画面の主役を明確にし、感情的な表現も可能になります。

