割る
映像制作用語辞典 | 株式会社SynApps
映像撮影に関連して「割る」と言えば、カットを割る、つまり1つのシーンを、最終的な映像作品において2つ以上の異なる視点やフレーミングのカットで構成することを想定して撮影するという意味です。
単に長回しで撮影した素材を編集段階で分割することではありません。
カットを割って撮影する事情は多岐にわたります。
1. 表現意図・演出上の理由
感情や心理描写の強調
登場人物の微妙な表情の変化を捉えるためにアップのカットを挿入したり、葛藤を表現するために視線を追うカットを挟んだりします。
情報伝達の効率化
広角で状況を示した後、重要なディテールをクローズアップで見せるなど、視覚的な情報を段階的に伝えることで、視聴者の理解を深めます。
テンポとリズムの調整
カットの長さを変えることで、シーンの緊張感や緩急をコントロールします。短いカットを連続させることでスピード感を出し、長いカットでじっくりと見せるなど、演出意図に合わせて調整します。
視点の多様化
同じ出来事を異なる視点から捉えることで、客観性を持たせたり、登場人物の主観的な体験を表現したりします。
モンタージュ効果
関係性の薄い複数のカットを繋ぎ合わせることで、特定の意味合いや感情を喚起します。
2. 撮影上の制約
時間的な制約
限られた時間の中で、必要な全てのアングルを効率的に撮影するために、細かくカットを割って進行します。
場所的な制約
狭い場所や複雑なセットの場合、カメラの移動や設置が困難なため、アングルを変えるごとにカットを分けざるを得ません。
技術的な制約
特殊効果や合成処理を行う場合、素材となる映像を細かく分割して撮影する必要があることがあります。
出演者の制約
出演者のスケジュールや集中力の問題から、長時間の連続撮影が難しい場合があります。
機材の制約
カメラの台数や種類が限られている場合、異なるアングルを同時に撮影できないため、カットを分けて撮影します。
3. 編集上の都合
トランジションの挿入
カットとカットの間に、ディゾルブやワイプなどのトランジション効果を入れるために、適切な尺のカットが必要になります。
尺の調整
編集段階でシーンの長さを微調整するために、複数のカットで素材を確保しておきます。
NGカットの回避
長回しで撮影した場合、一部にNGが出てしまうと全てを撮り直す必要がありますが、カットを割っておけば、NG部分だけをリテイクすれば済みます。
素材の組み合わせ
異なる日に撮影した素材や、別々の場所で撮影した素材を繋ぎ合わせるために、カットを割って撮影します。

【関連情報】
1. 美術の「書割」
書割(かきわり) は、舞台芸術、特に歌舞伎に由来する用語で、映像撮影において風景などを平面的に描いて、スタジオのホリゾントに設置する大道具です。スタジオ撮影において(稀に屋外でも)屋外や環境を再現する方法です。被写体に対して被写界深度を浅くして、この背景をぼかすと、実景撮影に近い表現が可能です。現在のCM撮影などでは、大型のモニターを背景にしたインカメラVFXが利用されます。
2. アニメーション制作の「中割り」
動きのキーとなる原画と原画の間を補完し、滑らかな動きを生み出すための中間の絵(動画)を描く作業です。原画マンが描いた重要なポーズや表情の変化をつなぎ合わせ、自然でリアルな動きに見せる役割を担います。この作業の質が、アニメーションの滑らかさや表現力に大きく影響します。熟練した動画マンの技術が求められる、根気と集中力が必要な工程です。
3. 映像制作の「カット割り」
1つのシーンを複数の短いカットに分割し、それぞれのアングルやフレーミング、被写体のサイズなどを具体的に決めることです。監督が中心となり、物語の展開、登場人物の感情、視覚的な情報伝達、画面のテンポなどを考慮して、各カットの意図や役割を明確にします。絵コンテや構成表などで視覚化され、撮影や編集の際の重要な指針となります。
4. 映像制作の「カメラ割り」
シーン内の各カットにおいて、どのカメラで、どのようなアングル、フレーミングで被写体を捉えるかを具体的に決定することです。カット割りで分割された各カットに対して、使用するレンズ、カメラの高さや角度、パン・ドリーなどのカメラワークを細かく指示します。撮影監督が中心となり、監督の意図を理解し、照明や美術などの要素も考慮しながら、最適なカメラアングルと動きを設計します。