オーサリング
映像コンテンツをDVDやBlu-rayなどの光学メディアに書き込むための加工・編集作業のことで、完成した映像素材に以下のような要素を追加し、再生可能な形式に構成する作業を指します。
実際の工程
メニュー画面の作成と設定
チャプター分け(映像の区切り)の設定
複数の音声トラック(例:日本語/英語)の組み込み
字幕データの組み込み
特典映像の追加
視聴制限(パレンタルコントロール)の設定
地域制限コードの設定
各種再生機能(早送り、巻き戻し、場面選択など)の設定
オーサリング作業により、単なる映像データが、メニュー操作や機能選択が可能な商品として成立します。視聴者が使いやすいメニュー構成や、安定した再生環境の実現など、ユーザビリティを考慮した技術的な処理が必要とされます。
なお、近年は配信コンテンツの増加により従来型のオーサリングは減少傾向にありますが、その基本的な考え方は、配信用コンテンツの構成設計にも活かされています。
映像制作会社としての視点
DVDやBlu-rayはビジネス映像制作において、納品形態のひとつです。しかし、クライアントからこの形態での納品を指示された際に起こりがちな事件があります。それは「DVD」という言葉を、単なる「円盤型の記録メディア」の総称として使っているのか、それとも特定の技術規格(DVD-Video)として使っているのか」という、認識の致命的なズレから生じる事件です。
1. 「フルHDなのにDVD?」というクオリティ事件
最も頻発するのが、画質に関する認識の相違です。
事件の内容
制作会社はフルHD(1920×1080)の綺麗な映像を完成させました。しかし、クライアントの指定が「DVD」だったため、これを「DVD-video」と解釈して、規格上の制限であるSD画質(720×480)でオーサリングをして納品しました。
顛末
納品後、クライアントから「元のデータより明らかに画質が汚い!ボケている!作り直せ!」と激怒されました。しかし、DVD-Video規格である以上、これ以上の画質向上は物理的に不可能です。クライアントはDVD-videoの解像度がそれほど低いとは理解していなかったのです。
2. 「再生できない」データディスク事件
次に多いのが、DVD-RとDVD-videoが再生環境を選ぶという事実を知らないという事件です。
事件の内容
クライアントが「DVDでください」というので、制作会社は「DVDでデータファイルを保存したいだけ」だと思い、DVD-RにFHDの .mp4 ファイルを焼いて納品したケースです。
顛末
クライアントがそのディスクを会議室のDVDプレイヤーに挿入しても、メニュー画面すら出ず「NO DISC」と表示され、会議がストップしてしまいました。
3. 「Blu-rayプレイヤーがない」再生環境事件
気を利かせたばっかりに叱られることもあります。
事件の内容
クライアントからは「DVD」でと言われたけれど、FHD作品なんだから綺麗に見てもらいたいと、制作会社が気を利かせてBlu-ray(BD-Video)にして納品しました。
顛末
「ディスクを入れたが全く反応しない。不良品ではないか?」と問い合わせが入ったので、「Blu-rayプレーヤーでないと見られません」と伝えたら「そんなもんない!」と言われてしまいました。世間一般では「DVDプレイヤーではBlu-rayが再生できない」という基本知識が意外と浸透していません。
これらの事故を防ぐために、DVDの発注時には、その使用環境についての情報共有を忘れずに行いましょう。
執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。
