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映像制作会社の見積書は価格だけで比較できるのか?

自治体や企業が映像制作を発注する際、複数の会社から見積書を取り、価格を比較して発注先を決定することがあります。

公平な方法のように思えます。

しかし、本当に比較しているのは「価格」なのでしょうか。

映像制作では、この前提が成り立たないことがあります。



同じ仕様書でも、同じ映像を思い描くとは限らない


例えば、仕様書に

「5分程度の企業PR映像を制作する。」

と書かれていたとします。

この仕様書を読んだ二人のプロデューサーが、同じ映像を思い浮かべるでしょうか。

あるプロデューサーは、

「インタビュー中心のシンプルなENG撮影で十分だろう。」

と考えるかもしれません。

一方、別のプロデューサーは、

「企業ブランドを表現するなら、スタジオ収録やドローン撮影、CGも必要だ。」

と考えるかもしれません。

どちらも仕様書を真剣に読み、自分なりに最適な制作方法を考えた結果です。

どちらかが間違っているわけではありません。

違うのは、仕様書の解釈です。


仕様書の同床異夢

比較しているのは価格ではない


この二社が見積書を提出したとします。

A社 180万円

B社 350万円

数字だけを見れば、

「A社の方が安い。」

ということになります。

しかし、本当に比較しているのは価格でしょうか。

比較しているのは、

それぞれの会社が頭の中で思い描いた映像

です。

完成イメージが違えば、

必要なスタッフも、

撮影日数も、

機材も、

編集工数も変わります。

金額が違うのは当然です。

つまり、

比較している対象そのものが違うのです。



建築で考えてみる


住宅を建てる場合、

施工会社に

「30坪くらいの家を建ててください。」

と言って見積書を集めるでしょうか。

おそらく、そのようなことはしません。

まず設計図を作成し、

その設計図をもとに各社が工事費を積算します。

だから価格比較が成立します。

映像制作も、本来は同じです。

ところが映像制作では、

設計図そのものを制作会社が提案する

ケースが少なくありません。

だから価格だけを比較することが難しいのです。



価格だけで比較したいのであれば


もちろん、不可能ではありません。

その場合は、

発注者自身が

  • シナリオ

  • 演出

  • カット構成

  • 撮影方法

  • ナレーション原稿

  • 使用素材

まで決定し、

制作会社が自由に解釈できる余地を極力なくす必要があります。

ここまで仕様を具体化して初めて、

各社は同じ設計図をもとに積算することになります。

そのとき初めて、

価格比較に意味が生まれます。



プロポーザル方式が採用される理由


現実には、

発注者だけでそこまで詳細な設計を行うことは簡単ではありません。

また、

制作会社ごとの企画力や演出力も評価したいという案件も少なくありません。

そこで、

企画提案と見積書を合わせて評価するプロポーザル方式が採用されます。

これは、

価格競争を避けるためではありません。

価格だけでは、公平な比較ができない仕事だからです。



本当に比較しなければならないもの


見積書は、

価格を比較するための書類です。

しかし、

仕様書の解釈が会社によって異なるのであれば、

比較しているのは価格ではありません。

比較しているのは、

それぞれの会社が考えた企画であり、

演出であり、

完成イメージです。

映像制作で最も重要なのは、

一番安い会社を選ぶことではありません。

比較できる条件を整えてから比較することです。

価格比較とは、

その条件が整って初めて意味を持ちます。


映像制作を発注する企業担当者のための情報発信です。

TomizoJInno.jpeg

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。

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