デジイチでVPを撮る映像制作スタイル
- Tomizo Jinno

- 2025年12月3日
- 読了時間: 5分
更新日:2025年12月31日
デジイチってなんですか?
デジタル一眼カメラのことです。略してデジイチ。
近ごろデジイチによる映像制作が、コーポレート映像制作の現場でもスタンダードスタイルのひとつになりました。単純に撮影に使用するカメラ機材が替わっただけと思ったら、これはじつは大きな勘違いなのです。
VPってなんですか?
コーポレート映像はこれまで、業界用語でVPと呼ばれていました。なんとこれ「ビデオパッケージ」の略であります。あまりに単純な呼び方だし、どうしてこれがビジネスユースの映像コンテンツのことを言うのでしょうか。
昔は映像コンテンツと言えば、テレビ番組、テレビCM、劇場映画くらいしか無かった時代が長く続きました。それらのコンテンツはたいてい電波か劇場配信で視聴者に届けられていたのに対して、VPはそのコンテンツがVHSやβmaxテープという物理的な「パッケージ」に入っていました。
そして、当時数百万円以上もする高額な機材とスタッフを使って、広告宣伝やマニュアル映像として動画コンテンツを作れるのは企業くらいしかなかったので、すなわちビデオパッケージ(VP)=企業向け映像だったのです。
ビデオパッケージという映像コンテンツのつくり方
このVPという映像コンテンツの制作は、企業への企画や構成案提案によって始まり、絵コンテのような仕様書のやりとりによって情報共有・理解を深め、要件定義=シナリオをまとめ上げた上で、撮影の現場に入ります。
要件を撮っていくという作業
こうした撮影は、例えば「データ入力している女性のキーボードを打つ指先」という指定であれば、キーボードを指先がスムーズに打っていればOKです。
次に「モニター画面を見つめる目」というカット割りなら、カメラを据えかえて、女性の目元を狙い、女性が妙な瞬きさえしなければ、これもOKです。
ことほど左様に、カメラが狙っているのは、キーボード、指先、目元、といった絵の要件を満たすことであって、決してエモーショナルな瞬間とか、印象的な表情の一瞬とかではありません。こういう撮影のことを「段取りを撮っていく」と言います。VPのカット割りは、大概の場合「段取り」で終始しているのです。もちろん時折「イメージカット」や「キメのカット」も撮影します。
機材もそれに合わせて進化した
なにが言いたいかと言うと、従来のVPの撮影現場では、シナリオに書き込まれているシーンを構成するためのカットの、要件要素を満たす映像を撮るための現場です。旧来からあるプロ用のビデオカメラは、こうした現場を高効率に高品位に撮影できることに特化した機材が主流でした。
シネマティックに撮るという感覚
ところが現在主流のデジタル一眼カメラ(デジイチ)は、まるで一枚一枚の写真を撮るようにレンズを交換し、被写界深度を活かして撮ります。なによりも狙っているのは決して要件要素だけではなく、ある一瞬のシネマティックな瞬間や印象的なライティングだったりします。つまり、こうしたカメラを使うこと自体が企画の一部であり、「映像美」「ビジュアルストーリーテリング」が訴求要素として大きな位置を占めているのです。
美しい瞬間はカメラマンにしか見えない
デジイチ撮影では、カメラを構えた前方に、傍目に要件要素が満たされている空間があったとしても、それを切り取ろうとしているカメラのファインダーが、そういう瞬間を捉えているかどうかは、カメラマンだけにしかわかりません。美しいことを狙った企画の映像撮影では、要件と美しい瞬間が一致した時を捉えないとOKカットにはなりません。
おうおうにして、そういう瞬間はなかなか訪れません。だからカメラマンは粘り強く構え、時にあっちにこっちに位置を替え、ちっとも次のシーンに移ってくれないのです。立ち会っているプロデューサーはハラハラです。
反面変わったこと
ただし、照明についての考え方も大きく変わりました。従来のVPでは、被写体や空間に影が出ることをとても嫌い、照明機材をたっぷり使い、時間もしっかりかけて照明をセッティングしていましたが、デジイチで撮影するような絵柄は、むしろ自然光や環境光を活かした表現を好みます。
だから、昔のような照明待ちでジリジリと時間が過ぎていくことは少なくなりました。むしろLEDパネルやRGBライトで素早くムードを作り込む時代です。
ただ勘違いしてはいけないのは、こうしたデジイチでなければ撮れない映像の企画と、従来からのビデオカメラで収録するほうが効率的な企画は、狙っている映像の世界観が異なるものです。ここを理解せずに、普通のVP的な内容をやみくもにシネマティックに撮影するのは意味の無いことです。
いまの時代の映像制作
ただ、昨今はシネマティックな映像の世界観が求められていることは確かです。さらに、YouTubeやSNS配信を前提とした縦型動画、ショート動画といった新しいフォーマットもあたりまえになりました。
プロデューサーの僕としては、面白くなったこともあれば、管理が複雑になった面もあります。ひとつ言えるのは、自分自身で映像のトーン&マナーを予め持っていて、それをディレクターやカメラマンと共有する技術を鍛えること。さらに、配信プラットフォームごとの最適化を理解すること。それが重要なことと感じています。

【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2026年1月現在)




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