電気自動車(EV)をBEVと呼ぶ時代の映像制作会社の提案
- Tomizo Jinno

- 6月12日
- 読了時間: 9分
更新日:11月14日
BEVという呼称が意味するもの
かつて「Electric Vehicle(EV)」は電気自動車の夢を象徴する言葉でした。しかしハイブリッド車(HEV)が予想外に普及し、これが純粋な電気自動車ではないという認知が広まったことで、HEVは「HV」に、PHEVは「PHV」に短縮されました。一方、自動車関係者は技術的な正確性を期すため、バッテリーのみで走る車を「BEV(Battery Electric Vehicle)」と呼ぶようになりました。
自動車産業の構造変化と東海地方への影響
東海地方は、トヨタを中核とした強固な自動車産業クラスターを形成しています。しかしBEV化により、この産業構造は根本的な変革を迫られています。
従来の自動車が約3万点の部品で構成されていたのに対し、BEVは約1万点に削減されます。エンジン、トランスミッション、排気系部品など、内燃機関の中核部品が不要となる一方、バッテリー、モーター、インバーターなどへの需要が急拡大しているのです。
特に深刻な影響を受けるのは、内燃機関関連の部品メーカーです。トランスミッション、エンジン部品、排気系部品、燃料供給系部品などを製造する企業は、長年蓄積してきた技術が活用できない状況に直面しています。雇用への影響も深刻で、多くの技術者や労働者が新技術への適応を迫られています。
一方、国際競争構造も変化しています。従来は日本とドイツが技術的優位性を保持していましたが、BEVの中核技術であるバッテリーでは中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションが市場を席巻。競争の構図が根本的に変わりつつあります。
しかし脅威ばかりではありません。全固体電池などの次世代バッテリー技術、高効率モーター、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体、軽量素材技術など、日本企業が競争優位性を発揮できる分野も多く存在します。
名古屋の映像制作会社が果たすべき役割
この大きな変化の中で、名古屋の映像制作会社には重要な役割があります。
新しいニーズへの対応
新技術の可視化ニーズ
バッテリー、モーター、インバーター、充電インフラ、AI制御システムなど、新技術の仕組みや優位性を視覚的に伝える映像の需要が急増しています。研究開発から量産、顧客へのアピールまで、あらゆるフェーズで高度な映像表現が求められます。
新興プレイヤーへのサポート
BEV化により、スタートアップ企業やIT企業など異業種からの参入が増加しています。彼らは従来の自動車メーカーとは異なるスピード感とプロモーション戦略を持ち、映像によるブランディングや採用活動支援を必要としています。
人材育成コンテンツの制作
多くの企業が従業員のリスキリングを進める中、e-ラーニング教材、技術習得チュートリアル、安全教育ビデオなどの需要が拡大しています。
企業ブランディングの変革支援
内燃機関からBEVへの移行は、企業のアイデンティティそのものの変化を意味します。未来志向の企業イメージを構築するブランディング映像や採用動画のニーズが高まっています。
専門性と技術力の強化
3DCG/アニメーション技術 物理的に撮影困難な内部構造や新概念を分かりやすく表現するため、高度な3DCG技術が不可欠です。
VFX技術の導入
プロトタイプやシミュレーション段階の技術をリアルに見せるVFX技術が求められます。
インタラクティブコンテンツ
VR/ARを活用した製品デモンストレーションや、オンライン展示会向けの新しい表現手法への対応が必要です。
グローバル対応
海外展開を視野に入れ、英語での企画提案や制作ディレクションができる体制の構築が重要です。
戦略的ポジショニング
ネットワークの構築
自動車メーカー、部品メーカー、研究機関、コンサルタントなど、業界のキーパーソンとのネットワークを構築し、常に最新情報を得ることが必要です。
専門性の確立
「BEV時代の自動車産業に強い映像会社」としてのブランドを確立し、さらに「バッテリー技術の可視化」や「自動運転技術の安全性」など、ニッチ分野での突出した強みを持つことで競争力を高めます。
スピードと効率性
変化の速い時代に対応できるよう、効率的な制作体制を構築し、迅速な納品を可能にすることが求められます。
変化を機会に変える
2023年から2024年にかけて世界の自動車市場は大きな潮流変化を経験し、BEVバブル崩壊の議論も起きていますが、長期的なトレンドとしてのBEV化は不可逆的と考えられます。
名古屋の映像制作会社にとって、自動車産業のBEV化は脅威ではなく、新たな成長と進化の機会です。変化を恐れず、新しい分野に挑戦し、自社の専門性を高めていくこと。それが、この歴史的転換点において生き残り、さらに成長するための鍵となるでしょう。

いま自動車産業に関わるキーワード
カーボンニュートラル(Carbon Nutral)
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにする概念です。自動車産業では、製造から廃棄までのライフサイクル全体でCO2排出量削減を目指しています。電動化推進、再生可能エネルギー活用、カーボンオフセットなどの手法で実現を図っています。
CASE
Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング・サービス)、Electric(電動化)の頭文字です。自動車産業の変革を表すキーワードとして、メルセデス・ベンツが提唱しました。業界全体の方向性を示す戦略的フレームワークです。
MaaS(Mobility as a Service)
移動を単なる手段ではなくサービスとして提供する概念です。公共交通、タクシー、シェアカー、シェアサイクルなどを統合し、スマートフォンアプリで一元的に利用できます。都市交通の効率化と利便性向上を目指す新しいモビリティパラダイムです。
IoT(Internet of Things)
あらゆる物がインターネットに接続される技術です。自動車では車両状態監視、予防保全、リアルタイム診断などに活用されます。センサーから収集したデータをクラウドで分析し、ドライバーや整備工場に有益な情報を提供します。
AIoT(Artificial Intelligence of Things)
IoTとAIを融合した技術です。IoTデバイスから収集したデータをAIで分析し、より高度な判断と制御を実現します。エッジコンピューティングと組み合わせ、リアルタイム処理が可能で、従来のIoTを進化させた次世代技術です。
EV(Electric Vehicle)
電気を動力源とする車両の総称です。バッテリー式(BEV)、燃料電池式(FCEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)などが含まれます。環境負荷低減と脱炭素化の中核技術として注目されています。
FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)
水素と酸素の化学反応で発電し、モーターで走行する燃料電池車です。水しか排出せず、水素充填時間が短い利点があります。商用車や長距離輸送での活用が期待されており、トヨタのMIRAIなどが実用化されています。
PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)
外部充電可能なハイブリッド車です。短距離はEVモード、長距離はエンジンとモーターの併用で走行します。充電インフラが限られた地域でも利用しやすく、EV普及の橋渡し的役割を果たしています。
HEV(Hybrid Electric Vehicle)
エンジンとモーターを組み合わせた従来型ハイブリッド車です。外部充電は不要で、回生ブレーキでバッテリーを充電します。燃費向上とCO2削減に貢献する成熟技術で、トヨタのプリウスが先駆けとなりました。
eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)
電動垂直離着陸機です。都市部での新しい移動手段として開発が進んでいます。エアタクシーやドローン配送などの用途で、交通渋滞解消と移動時間短縮を目指しています。空飛ぶクルマとも呼ばれます。
ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)
先進運転支援システムです。自動ブレーキ、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロール、死角監視などの機能で安全運転を支援します。完全自動運転への段階的なステップとして位置づけられ、レベル0から5まで段階分けされています。
V2X(Vehicle-to-Everything)
車両と周囲のあらゆる要素との通信技術です。V2V(車車間)、V2I(路車間)、V2P(歩車間)、V2G(車両-電力網間)通信により、交通安全向上とエネルギー効率化を図ります。5G通信技術の活用が期待されています。
LiDAR(Light Detection and Ranging)
レーザー光を用いて距離を測定するセンサー技術です。自動運転車の「目」として機能し、周囲の物体を3次元で正確に認識します。カメラやレーダーと組み合わせて使用され、悪天候でも高い精度を維持できます。
スマートファクトリー(Smart Factory)
IoT、AI、ビッグデータを活用した次世代工場です。設備同士が情報を共有し、自律的に最適化を行います。予防保全、品質管理、エネルギー効率化などを実現し、インダストリー4.0の中核概念となっています。
FA(Factory Automation)
工場の製造プロセスを自動化する技術です。ロボット、制御システム、センサーなどを統合し、人の介入を最小限に抑えます。品質向上、コスト削減、安全性確保を実現し、製造業の競争力向上に不可欠な技術です。
ICS(Industrial Control System)
工場やプラントの制御システムです。SCADA(監視制御システム)、DCS(分散制御システム)、PLC(プログラマブル論理制御装置)などで構成されます。製造プロセスの自動化と最適化を担い、FAの基盤技術となります。
AMR(Autonomous Mobile Robot)
自律移動ロボットです。工場内での部品搬送、倉庫での荷物運搬などに活用されます。事前のルート設定が不要で、環境変化に柔軟に対応できる特徴があります。AGV(無人搬送車)の進化形として注目されています。
デジタルツイン(Digital Twin)
物理的な製品やプロセスをデジタル空間で再現する技術です。リアルタイムデータと連携し、設計最適化、予防保全、品質管理などに活用されます。開発期間短縮とコスト削減を実現し、製造業のDXを推進する重要技術です。
EMS(Energy Management System)
エネルギーの使用状況を監視し、最適化するシステムです。工場や建物のエネルギー効率向上、電力コスト削減、CO2排出量削減を実現します。スマートグリッドとの連携により、電力の需給バランス調整にも貢献します。
パワーコンディショナー技術(Power Conditioning Technology)
直流電力を交流電力に変換(インバーター)したり、その逆を行う電力変換技術です。EVの充電システム、太陽光発電システム、車載電装品などで重要な役割を果たします。電力効率と品質の向上が継続的な開発課題となっています。
自動車産業、BEV関連企業の皆様へ:名古屋で映像制作会社をお探しならご相談はこちらへ
【弊社プロデューサー自動車関連制作実績】
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【この記事について】
本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、さまざまな業界の知見を収集・分析しながら、企業や団体が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、その産業分野ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。




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