動画・映像制作用語
【デュレーション】
duration
「デュレーション(Duration)」とは、映像制作における「尺」と同じ概念であり、すなわち対象とする映像(音声)がもつ固有の時間のことです。
映像編集ソフトの操作パネルだけでなく、シナリオ作成、ストーリーボード(絵コンテ)作成、撮影、演技、音楽、ナレーションなど、映像制作プロセスのさまざまな局面で、Durationという言葉が使われます。これは、映像コンテンツを構成するすべての要素が、時間軸を伴っているという特殊な創作物であることを表しています。
1. 企画・構成段階
アイデア出し・コンセプト策定
企画の初期段階で、最終的な映像の尺(上映時間)の方向性を意識します。ターゲット層や視聴環境によって、適切な尺は大きく異なるため、企画の根幹に関わる決定事項となります。例えば、短尺の広告動画なのか、長尺のドキュメンタリーなのかによって、企画の方向性や内容が変わってきます。
構成案・絵コンテ作成
各シーンの予定される尺(秒数)を具体的に落とし込みます。絵コンテであれば、各カットの長さを視覚的に示すことで、映像全体の流れと尺感を把握します。この段階での尺の想定が、後の撮影や編集の制約となるため、非常に重要です。
2. プリプロダクション(準備段階)
ロケハン・キャスティング
撮影場所や出演者の選定において、各シーンに必要な時間的な長さを考慮します。例えば、複雑なアクションシーンであれば、ある程度の尺を確保できるロケーションを選ぶ必要があります。また、出演者の拘束時間も、予定されるシーンの尺と密接に関わってきます。
撮影スケジュール作成
各シーンの予定尺に基づいて、必要な撮影時間を割り振ります。尺の長いシーンや、複数のカットで構成されるシーンは、より多くの撮影時間を確保する必要があります。
3. プロダクション(撮影段階)
本番撮影
撮影時には、事前に決められたシーンの尺を意識して演技やカメラワークを行います。ただし、現場の状況に応じて、尺を調整する判断も必要になります。
素材管理
撮影された各クリップの実際の尺を正確に記録します。これは、ポストプロダクションでの編集作業において、素材の長さを把握するための基礎情報となります。
4. ポストプロダクション(編集・仕上げ段階)
オフライン編集
撮影された素材を繋ぎ合わせ、物語の流れを作る段階です。各カットの尺を微調整することで、映像のリズムやテンポを作り出します。全体の尺が、企画段階で想定した尺に収まるように編集作業を進めます。
オンライン編集
色調整やVFXなどの視覚効果を加える段階です。これらの効果は、編集によって確定した各カットの尺に合わせて適用されます。尺が変動すると、エフェクトのタイミングがずれる可能性があります。
MA(Multi Audio)
セリフ、効果音、BGMなどの音声素材を映像に同期させる段階です。映像の尺に合わせて、各音声素材の尺やタイミングを調整します。BGMの尺が合わない場合は、編集や加工が必要になります。
書き出し・納品
完成した映像の最終的な尺を確認し、納品規定に合致しているかを確認します。配信プラットフォームによっては、尺の規定がある場合もあります。
このように、映像制作の各段階において、映像や音声素材そのものが持つ時間、そして最終的な映像作品の尺は、企画の根幹から納品まで、常に重要な判断基準となります。

【関連用語】
1. ランニングタイム(Running time)
上映時間
2. タイムコード(Timecode)
映像や音声の各フレームに割り振られた時間情報です。「HH:MM:SS:FF」(時:分:秒:フレーム)の形式で表示され、編集作業や素材の管理に不可欠です。デュレーションを正確に把握し、特定の時点を指定するために使用します。
3. イン点(in point)/アウト点(out point)
編集作業において、素材のどの時点から再生を開始し(イン点)、どの時点で終了するか(アウト点)を指定するポイントのことです。カットのデュレーションは、このイン点とアウト点の差で決まります。
4. カット(Cut)
簡単映像の区切りや繋ぎ目のことを「カット」と言うことができますが、カットはショットから必要な部分を抜き出したクリップそのもの指す場合もあります。映像編集における最小の単位で、一つの連続した映像の断片のことです。各カットのデュレーションを調整することで、映像のリズムを作ります。
5. ループ(Loop)
音声素材を繰り返し再生することです。短い尺のBGMなどを映像のデュレーションに合わせて繰り返し再生する際に使われます。